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ブニュエルの欲望は一貫している

『欲望のあいまいな対象』(1977/フランス/スペイン)監督・脚本: ルイス・ブニュエル 出演: フェルナンド・レイ/キャロル・ブーケ/アンヘラ・モリーナ/ジュリアン・ベルトー/アンドレ・ヴェベール

美しい小間使いに魅せられた紳士が体験する女の二面性の不思議を描いた巨匠ブニュエルの遺作。キャロル・ブーケとアンヘラ・モリーナが異色の2人1役に挑戦している。

ルイス・ブニュエルの遺作。元となっている原作があるのだがプルースト『失われた時を求めて』に似ている。それは大陸横断鉄道での旅の途中に話すフランス貴族のエピソードとしての物語。嫉妬の感情と相手のどうにもならなさ。その関係性はフランスとスペインの関係性でもある。

恋する相手のフラメンコダンサーが歌うのが『セリビアの理髪師』だろう。貴族がセリビア娘に恋するが恋は成就しない。彼女は彼の金が目当てなのだ。フラメンコの歌が劇中劇となっている。主演女優が同一人物なのに二人なのが話題になった。そのあいまいさも題名にあるのだろうか?

スペインのアンヘラ・モリーナはフラメンコが踊れるから抜擢したのだろう。フランスのキャロル・ブーケは、聖女のイメージ。フランス貴族が旧植民地の娘に恋をする。彼女はそれを受け入れるが金のためなのだ。そしてスペインのテロが背景として描かれている。ブニュエルの映画のテーマは一貫している。

彼女の欲望は愛にあるのではなく金なのだ。貴族のフランス人はそれを愛だと勘違いする。それはフランスのスペインに対する欲望の対象と一致する。彼女と貴族の男では、最初から対等の関係が成り立つわけがなかった。

チラシが卑猥だった。唇に毛が生えている。唇は女の嘘で、男の欲望はアソコだけだというのを暗示しているのかもしれない。シュールレアリスム的チラシだ。その画像のあいまいさ。

ラストのテロリストの標的となるのがパサージュというのもベンヤミンぽくていい。


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