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アダムス・ドライバーの最高傑作はバスの運転手

『パターソン』(2016年製作/118分/G/アメリカ)監督:事務・ジャームッシュ 出演:アダムス・ドライバー、ゴルシフテ・ファラハニ、バリー・シャバカ・ヘンリー、永瀬正敏

ジム・ジャームッシュが「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」以来4年ぶりに手がけた長編劇映画で、「スター・ウォーズ」シリーズのアダム・ドライバー扮するバス運転手パターソンの何気ない日常を切り取った人間ドラマ。ニュージャージー州パターソン市で暮らすバス運転手のパターソン。朝起きると妻ローラにキスをしてからバスを走らせ、帰宅後には愛犬マービンと散歩へ行ってバーで1杯だけビールを飲む。単調な毎日に見えるが、詩人でもある彼の目にはありふれた日常のすべてが美しく見え、周囲の人々との交流はかけがえのない時間だ。そんな彼が過ごす7日間を、ジャームッシュ監督ならではの絶妙な間と飄々とした語り口で描く。「ミステリー・トレイン」でもジャームッシュ監督と組んだ永瀬正敏が、作品のラストでパターソンと出会う日本人詩人役を演じた。

川本皓嗣『アメリカの詩を読む 』を読んでいてウィリアム・カーロス・ウィリアムズが『パターソン』のモデルのアメリカの詩人だと知った。日本ではさほど有名ではないが、アメリカではモダニズムの詩人としてT・S・エリオットに比肩するアメリカを代表する詩人でその詩集『パターソン』が何よりも有名だという。実際にその詩を読むと日常のスナップショット的な日記のような詩で誰でも書けそうな気がする。

ちょっとひと言 ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ

冷蔵庫に
入っていた
すもも
たぶん君が

朝食の
ために
とって置いたのを
失敬した

ごめん
うまかった
実に甘くて
冷たくて

妻へのメモ書きを詩にしたようなさりげない言葉が詩になっている。なんだかこのうだるような暑さにすももを食べたくなるような詩である。『パターソン』はそんなバスの運転手(ウィリアムズは町医者)がバスの乗務前にノートに詩を書きつけて一日を始め、映画の時間で一日に出会う人との交流を通してパターソンの人生を見ていくというジム・ジャームッシュならではの詩小説的映画である。そのぐらいの説明で十分であとは、観てもらい。ちなみに当時俳人を目指していた私が安易に詩人に変わるのもこの作品を見たからだった。

バス運転手の一週間。世界的な事件はないけど個々に様々な事件が。それでもほっこり詩を書いて妻に朗読する。奥さんも個性派で白黒模様でなんでもコーディネートするのが好きな人。突然ギターを買って教材DVDを観ながらスターを目指します。パルム・ドック賞のマーヴィンは迷惑顔。

その前に観た『ブルーム・オブ・イエスタディ』の無抵抗主義者犬のガンジーも良かったけど一人部屋に残して映画を観に行った主人の報復に詩集を噛みちぎるというテロリストぶり。ガレージの監獄行きになりました。詩人が書いた「パターソン」を見に日本からやってきた永瀬正敏も好演。

映画を観たあとにノートを買って詩を書きたくなるような映画。
2017年10月04日

『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』等身大になったのか。別ストーリーではアジア系がヒロインで黒人とのペアだった。でもこっちは二番手という感じではあったが好感は持てた。でもやっぱ一番良かったのは『パターソン』のアダム・ドライバー。バス運転手がダークサイドに堕ちて行ったのか。

2017年12月21日(木)

今話題の『フェラーリ』でも主役を張っているアダムズ・ドライバーだが、彼の一番の作品は『パターソン』だと思っている。その年の名刺代わりの10
本にも上げていた。

『お嬢さん』
『あゝ、荒野』
『グロリア』
パターソン
『セブン・シスターズ』
『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』
『ブルームーン』
『タンジェリン』
『サミーの血』
『野良犬』

2017年12月21日(木)の名刺代わりの10本

その年に見た映画だった。

永瀬正敏がパターソンに会いに行く日本人詩人は西脇順三郎のような気がする。


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