浮舟、寂聴さんになる
『源氏物語 55 手習 』(翻訳)与謝野晶子(Kindle版)
浮舟が生きていたとは出来すぎ。小説としてはそのあたりはあやふやな方が面白いと思うのだが。尼君も誰が誰だか錯綜する。源氏の女はみんな尼かいなと思うほどに。そんなことを思っていたら浮舟まで尼になるという。おいおい、もっと他に生き方はないのか?と問いたくなるがないのである。
吉川の僧都というのがここでは重要人物だという。それで浮舟に手を出すのかと思う(誰も思わない)が囲碁をするのである。このへんは面白い。紫式部も囲碁が好きだったとか。一日暇なものはそういうゲームオタクになるしかなく、かなり強敵になるのはそういうことだろう。
もう一つ暇人の手習いとして和歌を読むというのがあった。お経を読むというのもあるのだが、浮舟は和歌の方が良かったみたいで。それまでの女の君は男から来る和歌の返歌として和歌を詠む(受け身の形で)のだが、浮舟は自己対話として和歌を詠むのである。文学の始まりである。
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