記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

聖書からブルースが出来るまで

Netflix『マッドバウンド 哀しき友情』監督 ディー・リース/ 出演キャリー・マリガン/ ギャレット・ヘドランド/ メアリー・J. ブライジ(2017年アメリカ)

あらすじ
第二次世界大戦中のミシシッピ・デルタの綿花農場で働く2家族の物語で、夢想家の地主ヘンリー(ジェイソン・クラーク)とその新妻ローラ(キャリー・マリガン)を長とする白人のマッカラン一家と、小作人の家長ハップ(ロブ・モーガン)のもと、一族のより良い生活を求めて粘り強く働き続ける黒人のジャクソン一家の姿を描いています。
それぞれの家族から戦争へ従軍したヘンリーの弟で空軍パイロットのジェイミー(ギャレット・ヘドランド)と、ジャクソン家の長男で陸軍戦車大隊軍曹のロンゼル(ジェイソン・ミッチェル)が、受勲した戦争の英雄としてデルタへ帰郷してきたことで、両家は図らずも共通の困難に立ち向かうことになります。戦場で苦難を共にした2人の若き退役軍人は、白人と黒人の人種隔離政策が社会に根深く染み付いた南部の田舎街で、予想外の友情を育んでいくことになるのです。

『BESSIE/ブルースの女王』の監督ディー・リース。黒人女性監督でちょっと興味を持ったので、この映画を観る。けっこうハードな黒人差別映画。第二次世界大戦で白人を助け英雄になる黒人パイロット、ロンゼルと助けられたがPTSDになって帰ってきたジェイミーは友情を育む。しかしジェイミーの父親はレイシストでジェイミーも兄嫁と浮気をしてしまう。地主の白人一家と奴隷状態の黒人一家の家族の物語。ちなみにソウル歌手でオスカー候補にもなったメアリー・J. ブライジは黒人家族の母親役を熱演。

アメリカ南部の父権制が支配する家族の中で生きる白人と黒人のそれぞれの家族を描いた作品だが、終盤のKKKによる元黒人兵のリンチシーンが凄惨すぎるので注意が必要。『地下鉄道~自由の旅路~』に近い人種差別を扱った映画。その家族の中での白人家族の反目と黒人家族の協調性という対比も描いている。

主演は、白人妻であるローラ(キャリー・マリガン)の視点で物語は進んでいく(アメリカ南部のフォークナー的な風土)のだが、後半はジェイミー(ギャレット・ヘドランド)の視点で帰還兵のPSTDと黒人差別問題。やっぱ父殺しがテーマとして出てくるのだ。そして、それが黒人一家を解放することになる。父親の都に埋葬の後に黒人の父親が、この物語を象徴するような聖書の一節を読む。「ブルース」を感じる映像。

「女から生まれてくる人は日が短く悩みが多い
 花のように咲いては切られ
 影のように飛び去りとどまらない
 あなたはこんな者にも目を開き裁きを下すのか
 汚れたものから清いものを誰が出せようか
 木には望みがある 切られても芽を出す
 しかし人は死ねば消える
 水が枯れて乾くように
 人は伏してまた起きない
 天が尽きるまで人は目覚めず
 眠りから起きない
 アーメン」           ヨブ記



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?