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中央アジア今昔映画祭2022

〈中央アジア今昔映画祭2022〉『小さなアコーディオン弾き』(カザフスタン/1994年)監督・脚本:サティバルディ・ナリィムベトフ 出演:ライハン・アイトコジャノワ、バクィトジャン・アルペイソフ、ダウレト・タニエフ、ペーチャ・ハイトヴィチ

第二次世界大戦後間もない、日本人捕虜が働くカザフの小さな炭鉱町が舞台。カザフ人、ロシア人、ユダヤ人、日本人が混在する町で成⾧する少年の目を通して、当時の人々や社会を瑞々しく、ユーモア豊かに描いたラプソディ的傑作。 〈story〉アコーディオン弾きの少年エスケン。彼は母親にべったりの甘えん坊だが、映画を盗み見したり、娼婦の商売を覗き見たり、友人たちと悪さもしている。町にやって来たばかりのユダヤ人のユーラとはすぐに親友になった。エスケンと両親は日本人捕虜とも仲良く付き合っていたが、ある日、事件が起きる──。

1994年だからソ連邦が解体してカザフスタンが国として独立して間もない頃の映画です。モノクロでところどこカラーが混じっているのですが、手作り感がいい感じの映画でした。少年を主人公に据えた王道の少年映画で、コミカルに切なく描いていた。

日本人捕虜が出てくるのも注目するところで、カザフスタンの橋を作るので労働者として駆り出されていたようで、その日本人がカザフスタンの家族と仲良くなる。その交流を描いていて先日観た『ラーゲリーより愛を込めて』との違いが明確にでていました。

同じファンタジーならこういう交流を描いた映画の方が心温まる。ただのファンタジーでなく、カザフスタンの父は日本人のスパイだと言われて連行されてしまう。カザフスタンに変わったからソ連の暗黒面も出てきたのだと思います。カザフスタンで捕虜になっていた日本人の半数以上が亡くなったことも最後には伝えて慰霊碑で少年が祈るシーンまである。

日本人だけではなく、ユダヤ人の少年との交流も描いていて少年の人懐っこさが魅力の映画となっている。それはアコーディオン弾くことで音楽を通しての交流で「カチューシャ」とか日本でも歌われていた曲を民族を超えて合唱する姿に現れている。また映画館に覗き観する少年たちがいて、彼らがおなじみの映画音楽を口ずさむ。フェリーニのローマの少年たちを描いているようなカザフスタン映画でちょっとエロチックなシーンもあったりして飽きさせない秀作でした。

他の〈中央アジア今昔映画祭2022〉も観てみたい。


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