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佐藤まどか(2022)『スネークダンス』小学館

主人公の圭人は、ローマ生まれローマ育ちの中学生。両親は日本人で、自身も日本国籍をもつ。
ローマの風景をスケッチすることがすきだった。家族は美術の道に進むことを提案していたが、本人はピンときていない。
美術館や遺跡に触れる機会が多く、じぶんには美術のみちで生きていくような才能はなく、ただ美しいものを写しとるということがすきなのだ、とわかっていた。

ある日、父がひき逃げされて亡くなってしまう。
そして、日本にある母の実家へ引っ越すこととなった。

愛するまち、ローマを離れること、友だちと離れ離れになること。そこからわいてくるさみしいきもちと、父を殺した犯人がつかまらないこと、その犯人への恨みが圭人のなかにはうずまいていた。

日本では、とにかく目立たないようにしたかった。
帰国子女ということで、クラスから浮かないように、一人称にまで気を使った。

しかし、その努力もむなしく、学校一目立つ歩と知り合う。

歩は、昔ながらの建造物が取り壊されていくことに反抗し、工事現場の壁などにスプレーで落書きをしていた。
圭人はその姿をたまたま見かけたのだ。
歩の絵には、目をひくものがあった。
だからこそ、落書きという軽犯罪をやめさせようとおもった圭人だが、歩にふりまわされることに。
そのなかで、日本の建造物の特徴や、それを守っているひとがいることを知る。圭人は歩との交流のなかで、じぶんがなにをやりたいとおもっていることに、すこしずつ近づいていく。

進路やアイデンティティが不安定な中学生の成長を描いた本。
また、日本やイタリアの建造物や美術品について、日本の建造物を守りのこそうとしている宮大工についてふれることができる。

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