幻想

ボリス・ヴィアン(1998)『日々の泡』新潮文庫
を読みました。

日常を描いた小説のようにはじまり、浮世離れした雰囲気が漂い、反現実的な様相を帯びてくる。

全体的に不思議な小説なのですが、不思議と不思議ではない。
理解できないのに、こころのどこかが共感を叫ぶ。

捉え所がないのに、沁みるように文字が目にうつって、読むのを止めることができませんでした。

肺のなかに蓮の花が咲いてしまった美しいクロエと、クロエを愛するコランの物語があまりに哀しく美しい。つらいです。

そして、パルトルの著作を買うこと、パルトルが所持したものを収集することに傾倒しているシック、シックを愛するアリーズの物語が狂おしい。

アリーズは、シックが本と自分がその愛を分け合えると思っている、そんなことは無理なのに、と言います。
この一言が突き刺さりました。
シックはパルトルを通してしか、アリーズを認めることができませんでした。それでも、アリーズはシックを愛しているのでした。

決して良い読後感ではないのに、私はこの本をまた読むだろうと、そう思わされる1冊でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?