「うちは毒親ってほどじゃないんだけど、家族内で確執があんだよね」って関係を指す言葉がほしい

「あんたいいよね。羨ましいなぁ。」

ガツーンて頭殴られた気がして何も言えなかった。人を羨ましく思うことってあるけど、あんまり口に出さないよね。だって外側から見えてる部分は羨ましかったとしても、その人が抱えてるものは必ずあるだろうし、その人がそうなった経緯とか、バックボーンは見えないから。口に出したとしても、誉める意味でだよね。

外側しか見えていない、外側しか見ようとしない人の言葉。もしくは深く考えてない人の言葉。
「ありがとう、そんなことないよ」って言えたらいいんだけど、いつもそんな心穏やかでいられるわけじゃない。
ぐっとこらえて、正論の拳をぶつけそうになるのをこらえて、彼女の気が済むのを待った。「いやいやいや、なに言ってんの。冷静に考えてよ」って1から説明しても、傷つけちゃうから。

わたしの母は、もうずっとそう。

いつも誰かと自分を比べて、どれだけ自分か辛い思いをしているかを延々と延べ、自分の現状にうなだれる。周りがうらやましくて、自分の現状がうらめしいの。時に泣く。またかーってなる。えー、その悲しい話、前も聞いたよ。そんなに人を憎んでたら疲れないの?って思うけど、「そっか、母さんも大変だよね」って聞いてあげるのが吉。むしろ大吉。

わたしは人よりひねくれてるけど、もっと幼い頃から母が「そう」なってたら、もっとずっとひねくれていたはず。
母の「それ」は、後遺症。10年以上前に大きな病気をして、その日から性格が変わってしまった。命は助かったし日常生活はできているから、本当に運が良かった。

父は夜勤であまり家にいなかった。そうなった母と向き合うこともしない。顔を合わせることがなく、わたしの大反抗期時代も知らない。(性格が変わった母と家に二人きりで、一触即発だったこととか。壁を殴ったりバイクで家を飛び出した夜とか。(ヤバイなわたし!?完全にこじらせちゃってるな?!笑笑))
でも今おとなになったわたしはとーちゃん大好きなんだけどね。

不器用なわたしたちは、いつまでも核心に触れることをせず、いびつな形であの家に押し込められている。互いの努力と我慢によって絶妙なバランスを保ち、仲良く暮らす。きっとずっとそうやって暮らしていく。

彼らは毒親ではない。

わたしがいつか人の親になったとき、初めてのことに戸惑うし、余裕もなくなってパニックになるし、まいにち死ぬほど必死だと思う。血反吐を吐きながら働くつもり。
彼らもきっとそうだった。わたしたち兄弟を、精一杯精一杯育ててくれた。だから当時の(いまのわたしと同じくらいの年齢の)親に向かって、「なんでその選択をしたん」「どうしてあの時」「あの一言」なんて、もう口が裂けても言えないよ。頑張ってくれてありがとう、今度はわたしも頑張ってみるよって思う。
そう思える時点で、親の選択は間違ってなかったんじゃないかなとも思う。

「うちは毒親ってほどじゃないんだけど、家族内でどうしようもない確執があんだよね」

って関係を指す言葉がほしい。ぜんぜん円満ではない。同じ屋根の下では暮らせないし、2泊が限界。でも、いわゆる「親ガチャ」は外れてないし「毒親」ではない。ぜんぜん好き。(離れて暮らすいまは)

そういう親子って多いんだろうな。
どこもいろいろあるよね。


マツナガ

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