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画像生成AIに仕事を頼む。【名刺編】

今使っている名刺の底が見えてきた。
デビュー後に作成したもので、たぶん2刷くらいの名刺だ。
有り難いことに版元さんの授賞式パーティーに招待される機会があり、名刺を交換するのがとにかく多かった。少し刷っただけではすぐに尽きてしまうので、そこそこ多く刷っていたのだ。
しかし、昨今の情勢のせいでパーティーはなくなり、名刺もなかなか減らない――と思いきや、著作の舞台化などで新しい出会いに恵まれ、意外といいペースで消費していった。
名刺を久々に重版(?)しちゃう?と思ったが、ここのところ業界の変化に対応するべく働き方を変えているのもあり、心機一転、デザインを一新することにした。

シン・名刺を作る

私の名刺は、基本的に1から手作りだ。
前回の名刺も自分で撮影した写真を使用し、自分でデザインして印刷所に入稿していた。
前回は梟だったので、今回は鉱物にしようかなとぼんやり考えていた時に、画像生成AIが話題に上った。
我がnoteの読者さまは既にご存知だろうが、私は画像生成AIにどっぷり浸かっていた。

その時考えたのだ。
名刺のイラストを『Mid Journey』に描いてもらったらどうかと。
幸い、30$/月課金勢なので規約的に問題はないだろう。
ここで、「イラストにするなら好きなイラストレーターさんに描いてもらうのはどうか」という可能性も浮上したが、「神々の仕事を、たった数百枚のクローズドコンテンツで終わらせたくない。全人類に見てほしい!!!」という巨大感情のもと却下となった。

画像生成AIだと、思い通りの画像が出ないどころか、頓珍漢な画像を生成することがあるが、彼らは無限のリテイクに耐えてくれるしこちらの心苦しさや巨大感情も一切ないので、AIと私の根競べが始まった。

画像生成のAI 無限ガチャ編

私は、クリエイターのビジネス名刺は以下のものが必要だと感じている。

①連絡先
②自分の名前を憶えてもらえるようなインパクト
③自分の作品の方向性を醸し出す雰囲気

①はクリエイターでなくても必要なのでさておき。
②についてだが、名前を出して仕事をしている者にとって、名前を憶えてもらうというのは重要だ。書店さんやネットなどで作品をお見かけの際、名刺を交換したことを思い出してもらえると仕事に繋がりやすい。
また、③についてだが、作品の方向性を理解してもらうことも重要だ。ハートフルな児童向けをやりたいクリエイターが、血みどろでパンクなデザインの名刺を使ってはいけない。

以上のことを踏まえ、私は「蒼月海里」なので、月と海があれば名前を印象付けることができるなと思った。
しかし、ポストアポカリプスが好きなのと、舞台を派手に破壊するのが好きなので、ぶっ壊し作家としても周知されたい(サンシャイン60はゾンビが溢れたり都知事に撃たれたりしている。自ら作った仮想の町も最終的にぶっ壊した)。

両立は難しいけど、どちらかが印象付けられるイラストにしよう。
そう考えてプロンプトを打った結果、出力されたイラストの中で使えそうだと思ったのはこちらだ。

月が綺麗ですね。レタッチして画面を整えれば使えそう。巨大な月は好物。
東京という単語をプロンプトに入れていたためか、東京らしさの一つとして桜が登場。
色味はエモいが、月まで桜に侵食されている。
そして、どうも船っぽいものを浮かせて海を表現したがっているようだ。
元書店員小説家だし、廃図書館はどうかと思って生成。
だが、水没しているので本的には最悪の環境だ。
鉱物好きだし作品によく使うので海に結晶を浮かせてみる。
幻想的なのでファンタジー作家的にはアリ。
Mid JourneyがStable Diffusionを食って進化した辺りのもの。
精度が上がっているが幻想的なものが苦手になった。
このくらいならばレタッチは不要。この生成物は最終候補まで行った。
夏の終わりを感じたい時に作ったもの。
廃墟感が気に入っていたので名刺候補にも入れていた。
電線フェチ的に好きだったので一時候補に入れていたが、
「らしさ」がないので没になった。
これも廃墟感が強くて好きだったが、色味に「らしさ」はない。残念。
ポストアポカリプスものをやりたいという意志が強過ぎる。
私は大変好みだが、名刺としての機能はイマイチ。
こんなイラストが添えられた名刺を渡してきた作家には、現代モノを頼みにくい。
現代モノだってやり続けたいのに。

厳正な審査の結果……

以下の生成物を採用することに決定。
「月」と「海」が入っているし、主張が強過ぎないし、何よりもバランスがいいし文字を入れやすい。
因みに、この街並みは東京なのだが、プロンプトに「abandoned」がきっちりと入れられていた気がする。人類は既にいないか、スカベンジャーやレイダーが闊歩しているのだろう。

文明がなくなっても月は綺麗なのだ。

この後、自分で文字を入れて印刷所に入稿し、出来上がったのはこの名刺だ。

いい感じではないだろうか!(自画自賛)
読者さまや担当さんからも好評で嬉しい。
旧名刺が無くなった際は、シン・名刺をお配りしたい所存。

ついでに、いつかキラキラが入った名刺にするという目標も叶えられて満足だ。
物心ついた時からビックリマンに慣れ親しんでいた世代なので、キラキラやホログラムに猛烈に弱い。遊色が美しいオパールを見ても、「ビックリマンシールみたいで綺麗ですね!」と言ってしまう。これは、私的には最上級の褒め言葉なのだ。

それにしても、『Mid Journey』はいい仕事をしてくれた。
イラストレーターさんの神の手を煩わせたくないけどイラストが欲しい、という時にちょうどいい気がする。
今回はAIを正しく使えたのではないだろうか。

本件を通じて、AIと上手く付き合う方法を一つ見い出せたような気がする。
画像生成AIは既に様々なところで導入されているだろうし、あと十年もすれば日常の一つになるだろう。
そんな日々の変化に翻弄されつつも、ミラーレス一眼レフを手にして鉱物を幾つも並べて上手くもない写真を何十枚も撮った上で名刺用に画像を加工するという手間が省かれた時間で、西友で安売りされていたハーゲンダッツを優雅に食べてのんびりゲームにでも興じたいと思う。

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