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筋肉をつけたら家を買っていた⑩【家探しに必要なのは信頼できる不動産屋さんでした!?~燻製になるのは御免です!】

前回の更新から時間が空いてしまったのは、仕事にもみくちゃにされたり、体調を崩したりしていたからだ。
まさか、寒暖差アレルギーで喉に来るとは思わなかった。今までは鼻だったのに。
しかし、今回のようにずっと平熱だけど喉が痛くて咳が出るという症状は季節の変わり目で頻繁にあったので、あれは風邪ではなくアレルギーだったのかもしれない……。
新天地ではアレルギーに強いお医者さんがいたので、今まで疑問に思っていたことも明らかになって良かった。
まあ、私の呟きはともかく、本編に入るとしよう。

いざ内覧!

自分が求める物件を可視化した私は、物件紹介サイトで条件に合った物件を絞り込むことにした。
長年愛用してきた「SUUMO」だ。
他にも使えるサイトはあるだろうし、もっと良いサイトはあるかもしれないが、私はSUUMOとともに歩んできたので今度も頼ることにした。マスコットキャラがマリモみたいで可愛いし。

時系列がやや前後してしまうのだが、実は「家を買うか」と思った時点でおおよその目星をつけて、千葉の物件を見、それから不動産屋さんに住宅ローンについて教えてもらったという流れだ。
この記事では、主にどんな物件を検討したり、どんな不動産屋さんに会ったりしたのか、体験談を書いていきたい。

利便性抜群、海近、リーズナブルな船橋市!

東京都23区内の家を買うなんて無理と思い込んでいた私が最初に目を付けたのは、船橋市のタワーマンションだった。
船橋市はJR総武線が通っているので、東京への利便性は鬼強い。
秋葉原、御茶ノ水、飯田橋、市ヶ谷、新宿まで一本で行けるのは神だ。
交通事情はほぼ東京といっても過言ではないだろう(過言です)
千葉県育ちの私は多少の土地勘があるし、船橋の駅前は栄えまくっているので一通りのものは揃う。

加えて、タワマンであれば管理が行き届いているし、セキュリティが充分。
ファミリー層も多そうなので、マンションの治安もいいだろう。
しかも、この物件があるのはベイエリアでオーシャンビューだ。

ただ、高さが気になる。
池袋では35階に住んでいた。
実は内覧できそうな部屋がそれ以上の高さなのだ。
眺望は良いかもしれないが、防災面が気になりすぎる……。

一先ず、私は不動産屋さんに内覧希望を出した。
すると、すぐに見られるとのこと。レスポンスの早さは気に入った。

翌日、私は船橋の物件に急行した。
不動産屋さんは明るく気さくでフレンドリーな人だ。
雨模様だったが、明るい気持ちで内覧へと向かった……。

船橋市タワマン35階以上

そのマンションは、煙突のようだった。
曇天を貫く姿にいささかの不安を覚える。
セキュリティがちゃんとしたエントランスからマンションに一歩踏み入れてみたのだが、何かが引っかかる。

この物件、写真で見たよりもはるかに暗いのである。
もちろん、曇天というのもあるのだが、コンクリートの無機質さも相俟って、ひんやりとした空気が漂っている。
おかしいな。添えられていたマンションポエムでは、もっとアットホームな雰囲気っぽかったのに。

私が思ったように、住民はファミリーが多く、すれ違う人達は大変アットホームで治安の良さを垣間見た。
だが、奇妙な違和感がずっと私に付きまとっていた。なんだか妙に、ざわざわするのである。

違和感を抱いたまま、内覧の部屋へと向かう。
マンションのデザインはオシャレなのだが……。

件の部屋は綺麗だった。
丁寧に使われているという印象だ。
お年を召したご夫婦がお住まいだったようで、夫さんの出張ゆえに船橋を離れざるを得なかったという話だ。引っ越しの理由も悪くない。
その上、ベランダからは東京湾が見えて良い。
晴れた日はディズニーランドが見えるそうだ。私は特に興味をそそられないが、お好きな人にはたまらないだろう。

だが、気になることがあった。
ベランダがクソ汚いのである。
部屋の様子から、ご夫婦がベランダを手入れしていなかったとは思えない。
これは恐らく、手入れをしても速攻で汚れるのだ。
何せ、オーシャンがビューできるほど海が迫っている。
海風の影響を受けやすく、潮風に乗って色んなものが飛んでくるのだろう。
海の近くは塩害があるというのは聞いているが、まさかこんな弊害もあるとは。

また、マンションの構造は吹き抜け。
その吹き抜けに階段があってオシャレな仕様だ。
そして、エレベーターホールは一カ所で、ゴミステーションは一階のみ。
マンション自体の面積は広くなく、吹き抜けと階段はぎゅっと詰まっている。

これが何を意味するかというと、

①ゴミ捨ての際、エレベーター(密室)で他の住民とバッティングする可能性が高く、お互いに気まずい想いをする。
下階で火災が起きた際は逃げられないし、煙突構造なので煙が上階に向かうのは早いと思われる。因みに、レスキューヘリが停まる場所はない。

そして、35階から地上までくだりはダッシュ17分(その後、足が使い物にならなくなるので上れない)を経験した私は、停電になったら終わることを知っていた。私の体力では、35階から地上まで徒歩での往復は絶対に不可能だということが既に証明されている。
ハザードマップは赤いし、浸水の危険性も高い。
この築年だと電気室は絶対に地下にあるし、第二の武蔵小杉のタワマンになりかねない。

武蔵小杉の水害は、そもそもハザードマップでフォロー外の「想定外」の事態だ。
想定外の事態というのは、いつでもどこでも起こり得るものだし、「停電はするもの」「火事は起こるもの」という視点で物件選びをしたいと思っていた。
大事なのは、「停電しても地上へのアクセスが苦ではないか」「火事が発生した際の避難経路は二箇所以上あるか」である。
仮にハザードマップで真っ赤な地域だとしても、停電した時にどうにかなりそうならば問題ないのだ。

「上は最上階なので地権者さんしかいません。きっと静かですよ」と説明する不動産屋さん。
「これ、停電や火災が発生したらどうするんでしょうか?」と尋ねると、「えっ、どうするんでしょうねぇ……?」とのこと。
質問を質問で返すなあーっ!!

その後、廊下が長いとおばけが出そうで怖い(私は昔から長い廊下が苦手なのだ……)と話した時、不動産屋さんは饒舌に自身が聞いた怪談を披露してくれた。
怪談は興味深いが、私が聞きたいのは防災についてなんだよッ!!

火事が発生したら燻製になるかもしれないと思った私は、その物件を諦めることにした。
しかも、定借物件なのだ。
いざとなったら永住できるという安心感を手に入れたいので、二の足を踏んでしまう。

その後、不動産屋さんに予算と事情を伝えたところ、住宅ローンが組めるということを教えてくれた。おおよその金額も算出してくれた。
ありがとう不動産屋さん。あなたは私の選択肢を増やしてくれた。

だが、防災の質問を曖昧にしたのはいけなかった。
内覧中に偶然、家主さんから電話がかかってくるのも妙だったし、家主さんとの話が盛り上がりすぎるのもいかがなものかと思った。
かつて不動産屋さんに騙された私は、気さくな担当者を演出しようとしているのではと懐疑的になってしまったし、内覧中に電話に出るのはいかがなものか。
他にもいろいろあって、ちょっと信用ならないなと思ったので、彼から不動産を買うという選択肢はなくなった。

因みにこの物件、後に「大島てる」で確認したら複数件燃えていた
あの時の気持ちのざわつきは、何かを感じていたのかもしれない。

とは言え、火事は滅多に起きるものではないし、ゴミ出しの気まずさを感じなかったり、「事故」があったことを気にしない人、定借でもいい人には問題ないだろう。
駅も近いし眺望もいいし、住民の雰囲気もいい。
割といいところが多いのだが、デメリットがたまたま私の避けたいものと一致してしまったのだ……。

会わなかった不動産屋さん

住宅ローンを組めば東京23区内に住めることがわかった私は、23区内で探し始めた。
池袋より海が近く23区内のどこかがいい。
そんな漠然とした探し方だったが、いくつか候補があった。

品川区の定借タワマン(弁護士付き)

品川区と言ったら海である。
そう思っているのは私だけかもしれないが、辛うじて手が届きそうな物件を発見した。
ただし、定期借地権物件だ。というか、品川区で条件に合う物件は定借じゃないと手が届かない。

オーシャンがビューできるかわからないが、オーシャンがすぐのリバーサイドだ。
品川には数回しか行ったことないが、町の雰囲気も好きだし見てみよう。

そう思って内覧希望の連絡をしたところ、レスポンスが妙に遅い。
はて、と思っていたら、「こちらの物件は弁護士さんを通じてやりとりをしているのでお返事が遅くなります」とのこと。
べ、弁護士~~~???
初めてのパターンで、なんかこわいと思った私は「やっぱりいいです!」とキャンセルに。
その物件は、半年以上経っても値下げをしながら残っていた。ブランド力がある物件なのに……。
一体何があったというのだ。真相は闇の中である……。

自称地域ナンバーワン!!

オーシャンは近くないが、リバーサイドの物件にも目をつけた。
大規模マンションでファミリーが多く、治安が非常に良さそうだ。
気になったのは駅から遠いうえに、駅前が栄えていないこと。
買い物はかなり不便そうだったが、マンション内にミニショップとカフェがあるという。
マンション内カフェ、なんと聞こえのいい言葉かーー!

一先ず見ておこうと思って内覧希望の連絡をするも、残念なことに決まってしまったとのこと。
そのマンションを諦めきれない私に、不動産屋さんは言った。
「このマンション、お子さんが多いので共有施設は煩いかもしれませんよ」
いいんだよ!
子どもが騒ぐのは当たり前だし、数年経てば成長して分別がつくようになる。騒がしい大人より一億倍マシだ。
奇声を発する大人(タワマンに住んでる時、上階から度々聞こえていた……)や夜中にビートを刻んだりテレビを大音量で見たり、バンド仲間を連れてどんちゃん騒ぎをしたりする大人のそばで暮らしていた私にとって何の問題もない。
タワマン住まいをしていた時は隣家に老夫婦がお住まいで、お孫さんが遊びに来た時に壁ドンが酷かったのだが、一、二年ですっかり成長して、静かに団欒をするようになったのだ。
そんな変化をモブとして見守るのも悪くなかったのだが。

残念がる私に、不動産屋さんは畳みかけるように言った。
「大丈夫です。僕は北区ナンバーワンと言われているので!」

なぜ北区???
私が問い合わせたのは葛飾区の物件なのだが……。
しかも、北区は一度住んだことがあって、住みやすい部分も知っているのだが、海からかなり遠いし、私が家を買うというイメージはないのだ……。

だが、
「見せてもらおうか、北区ナンバーワンの実力とやらを」
と思った私は、物件探しをお願いすることにした(というか探したがっていたので……)
彼は明日までに送ると意気揚々と答えたのだが、翌日になっても連絡は来なかった……。

そして数日後、いくつかの候補が挙がってきたのだが、残念ながら、海近を差し引いても私の要求を満たしたものではなかった。十条の良い物件があったら、もしかしたら飛びついていたかもしれないのだが(商店街大好き)
今回は見送る旨を伝え、それ以降、連絡もしてないし来てもいない。
ナンバーワンとはなんだったのか……。

余談だが、あとで確認したところ、葛飾区の物件も「大島てる」でボーボーだった。
どうしてそんな物件ばかり引き当てるのか……。
因みに、私が住んでいた池袋のタワマンもボーボーだった……。

Kさん、あなたに決めた!!

SUUMOに張り付きながら、私はセキュリティがしっかりして防災面で不安のない予算内の物件を探し続けていた。
もちろん、「大島てる」を見ることも忘れない。私は陰の気マシマシなので、陰の気が多いところは避けたい。

候補が幾つかあったのだが、その中で気になる町があった。
海が近く、地名は聞いたことがある。だが、駅で降りたことがない。
知ってるけど知らない町だ。
なぜ降りたことがないかって? 観光するものがないからだ

つまり、外部の人間がほぼ来ない、地元民だらけの町。
池袋で観光客の大きな荷物にもみくちゃにされまくっていた私は、住むならば観光地ではない場所がいいと思っていた。
駅前のスーパーにお惣菜を買いに行く度に、観光客に囲まれて移動するのは苦痛だったのだ。ニンニク系のお惣菜を買った帰りに、エコバッグからニンニクの匂いをさせながら、キラキラに着飾った観光客やカップルの隣を歩くのも申し訳なかったし……。

とにかく、私はその町の物件を問い合わせた。
レスポンスは比較的早く、定番の予算や属性(職業や家族構成など)の聞き取りが電話で行われた。

予算はこれくらいで、職業は小説家。だから、収入が安定してないのがデメリットである。
小説家ということを明かすと、大体の人が「えー、すごい!どんな小説を書いているんですか!?!?!?!?」と前のめりになってくる。
興味を持ってもらえるのは有り難いのだが、小説をよく知らずに食いついてくる人がほとんどで、直木賞とか芥川賞とか村上春樹とか……というノリで話してくるので説明が難しい。
受け答えが面倒くさいなと思う時は「ライターです」と濁すのだが(一般人がイメージし難くて食いつき辛いようだ)、不動産屋さんには正直に答えた方がいいだろう。
今まで会った不動産屋さんは営業スキルが高いので、(小説に興味がなくても)めちゃくちゃ食いついてきて、ここぞとばかりにおべっかを浴びせてくる。多少売れた時におべっかを使われまくった私は、それが本心なのかおべっかなのか、なんとなくわかるようになってしまい、気疲れしてしまうのだ。

またお決まりのパターンかなと思って覚悟をしつつ、小説家と名乗ったのだが、その不動産屋さんは違った。
なるほど。そんな感じなんですか(無感情)

ど、ドライ~~~~~~~!!!
小説家という職業に一切食いつかず、フリーランスで収入が不安定という方を重視したようだ。

フッ、おもしれー不動産屋さん。
今までなかったパターンで、なんか嬉しくなってしまった。

ひとまず、内覧する物件の前で待ち合わせをすることに。
外見の特徴がわかってるといいなと思い、私が自身の身長を教えると、不動産屋さんは自分の身長は180cmだと教えてくれた。
真面目か~~~???
そのやり取りで、今までの不動産屋さんとは一味違うと確信した。
仮にKさんとしておこう。
余談だが、Kさんの身長を把握した私は、内覧中にずっとスケール代わりにしていた……。

いざ内覧日。
その気になる町に降り立ち、海から吹き付ける強風の中、私は件の物件前でKさんを見つけた。
たしかに高身長!
すらっとした姿に清潔感があるシャツ、そして、ベテランの風格。
そして何より気になったのが、バキバキに使い込まれた上、資料が詰め込まれてパンパンになった鞄だ。

全体的にめちゃくちゃちゃんとした真面目っぽい人なのに、使い込みが激しい鞄が気になる
使い込めば使い込むだけ味が出る頑丈な革の鞄とお見受けするが、それにしたって酷使し過ぎである

私は直感した。
Kさんは、仕事に妥協がないタイプだ。
このベテランの老兵のような鞄は苦楽を共にした戦友なのだろう。
年齢的には昭和の男。足で稼ぐ時代の申し子である。
かといって、昭和特有の暑苦しさはなく、平成後期のようなドライさがあってほどよい距離感!

この人は……信用できる……!
この物件が気に食わなかったとしても、次の物件もこの人に頼もう。
私はそう決意しながら、内覧すべきマンションのエントランスへと向かった。

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