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いま みんなが幸せ その清々しさ! 『おちゃのじかんにきたとら』

娘が通っている幼稚園では、絵本の読み聞かせをたくさんしてくれます。古い園で、よい絵本を読むことは大切と考え、毎日たくさんの蔵書からセレクトして読んでくれているようです。

よほど集中して聞いているのか、驚くほど内容を覚えて帰ってきます。他のおともだちと一緒に物語世界を体験することで、中身により深く入り込んでいるのかもしれません。

娘が「これ、幼稚園で読んでもらった」と言って私が教えてもらった本の中で、とても良かったのが『おちゃのじかんにきたとら』。初めてこの本を読んだときは、衝撃を受けました。

お母さんと娘がお茶をしていたところに、トラがやってきます。
仰天して腰を抜かすこともなく、普通に招き入れ、一緒にお茶をする母娘。トラは、家にあるものを全部たいらげて帰っていきます。
お父さんのごはんがなくなってしまった、どうしよう、というところへお父さんが帰ってきます。
さあ、どうなったでしょうか??

トラを招き入れるお母さんにも驚きましたが(確かにとても礼儀正しいトラとはいえ・・・)、お父さんの対応にもびっくり。
そうか、それでいいんだ! 物事はシンプルに、みんながハッピーであることが一番大切だよね、と、とても清々しい気持ちになりました。

・・・私があのお母さんだったら、絶対あんなおおらかには居られないだろうけれど! 
(2014.10.29)

絵と文:ジュディス カー, Judith Kerr  翻訳:晴海 耕平  「おちゃのじかんにきたとら」(童話館出版)

※10年後の私からのコメント
この絵本には、いま読んでも、救われるような気持ちよさがある。
●●になっちゃったら大変、●●しないように気をつけないと。
子どもを育てていると、先回りして心配したり用心することが多くて、気づかぬうちに疲れていたのだろう。でも、いま、ここにいる人(とトラ)たちが心地よく楽しくいることだけを考えるなら、こうなるよね、とハッとする。
現実にはやっぱり先のことも考えてしまうけれど、大切なことを思い出させてくれる、すてきな一冊。

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