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幕間話001_玉座の花(前編)
ーーだから、わたし嫌いなの。
雨の合間を縫ってそのような声が、耳を掠めた。
足を止めて辺りを見渡すが、ここにあるのは、古びた玉座と石畳の両側を覆うような花ばかりだ。人っ子など、今先ほど此処に辿り着いた私以外誰もいない。
かと言って、その〝声〟というやつは、私が空に放ったものでもない。
気付きなさい、と言うかのように、今度は背後から風が強く吹きつけた。
「……っ!」
思わず強く瞑った後、目を開
幕間話_前書「雨音の話」
それはここ、トーキョーの向こう側。
様々な時間と世界が一度に交差するような、拠点となる場所がある。
ある特定の電車で霧のかかったトンネルを抜けると、見えてくるのは大きな電波塔。
言葉を蓄えて燃料とし、電力の供給と地域の発展を繰り返した街の象徴。それが目に入ったのなら、もう終点まで3分もかからない。
言葉とともに生きる街ーーアカシア区はすぐそこである。
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