幕間話001_玉座の花(前編)
ーーだから、わたし嫌いなの。
雨の合間を縫ってそのような声が、耳を掠めた。
足を止めて辺りを見渡すが、ここにあるのは、古びた玉座と石畳の両側を覆うような花ばかりだ。人っ子など、今先ほど此処に辿り着いた私以外誰もいない。
かと言って、その〝声〟というやつは、私が空に放ったものでもない。
気付きなさい、と言うかのように、今度は背後から風が強く吹きつけた。
「……っ!」
思わず強く瞑った後、目を開くと、先程との違和感に彼女はすぐに気がつく。
『わ、た、し、き、ら、い、な、の