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人生初の似合うメガネ

人生で初めてメガネを買ってもらったのは中学生の時だった。

席によって黒板の文字が見えにくいというレベルの視力に低下したため、日常的な着用ではないのだが、メガネが必要になった。

実家のある過疎地から車を1時間ほど走らせたところに、お城のような建物のメガネの三城があり、母親に連れて行ってもらった。白く明るい店内にズラリと並べられた沢山のメガネの中からいくつか試着し、黒色のとても大きなフレームのメガネを買ってもらった。

んちゃ!あたしaoten

メガネデビューは見事にアラレちゃんコスプレとなった。未だになぜそれを選んだのか、なぜ周りの大人は止めてくれなかったのか未解決のままだ。

芸術大学進学とともに田舎から都会へと移り住んだ私は、んちゃメガネからオシャレメガネに変えようと決心した。視力も落ちてきたし、何しろ芸大生はみんな個性的でオシャレな人たちばかり、とてもじゃないけどんちゃメガネなどかけられない。しかも都会にはメガネの三城以外の選択肢が沢山ある。

私は白山眼鏡に行った。オシャレな来店者と店員に圧倒されながら選んだメガネは、モスグリーンで細いフレームの、まん丸メガネだった。

ここにラストエンペラーが誕生した。

個性溢れる芸大生たちに負けるもんかという強い意志が感じられる。そしてラストエンペラーはある意味そこに一石を投じるだけの異質感はあったように思う。

そして社会人になった。もうエンペラーも本当の意味でラストにしなければならない。そんな折り、大学時代からの親友がメガネ屋に就職した。私の親友は本当に昔も今もセンスが良い。同じ芸大生であった時代から一際目立つ存在で、選ぶもの全てが魅力に溢れていたし何より自分に似合うものをわかっている。

私はそんな親友が勤めているメガネ屋に行き、新しく買う事にした。親友は私に似合う色、形のタイプをアドバイスくれた後、そのタイプの中で好きなブランドを選んだらと言ってくれた。そして私が選んだメガネを見て絶句した。

それは、メガネのアームの部分に結構大きく「PRADA」と書かれていたメガネだった。

「え、プラダ?」「マジでそれにするん?」

きっと、そのセンス何なん?と言いたかっただろう。20代前半だった私は見栄っぱりの最盛期を迎えていたのだ。ビバ、ブランド。

いやブランドが悪いわけではない、プラダのメガネに釣り合う自分ではなかったのだ。

親友も、聞く耳を持たない私に呆れて、じゃあもうそれにすればという感じだったと思う。ただ、色や形は見立ててもらったので、プラダのロゴが派手に主張している以外は似合っていた。

それからしばらくしてコンタクトも併用し始め、長い歳月を過ごしてきた。

そしてつい数ヶ月前、久しぶりにメガネを買いたくなった。もういい歳だし、歳相応の、大切に使えるメガネが欲しいと思ったのだ。

これまでに数々の失敗を繰り返してきているが、もう立派な大人だ。きっと今度は落ち着いて自分に似合うものを選べるはずだ。

何店舗か巡った最後に、金子眼鏡に立ち寄った。

色々と物色していると、20代と思しき女性の定員さんがスッと近寄ってきて、「宜しければ何かお選びしましょうか?」と声をかけてきてくれた。

私はあまり店員さんに声をかけられるのが好きではないのだが、その時は何故かその子が纏っている不思議な空気に惹かれ、思わず「お願いします」と言ってしまった。

黒髪のショートボブ、全身黒っぽい服を着ていて、うつむき加減で、控えめで、まるでアニメの世界の魔法使いのようなちょっとマニアックな雰囲気。かけているメガネが本人にとてもよく似合っている。

「こんなのはいかがでしょうか」といくつか選んで持ってきてくれた。恐らく入店してから私が手に取ったものを見ていて、好みを推測してくれたであろうセレクトだった。どれもこれも私好みだ。

1つ1つ、鏡の前でかけてみる。

その中から2つに絞った。1つは角ばった形で、マットなダークブラウンの個性的なメガネだ。このお店の限定品で、ほかには無い形だそう。もう1つは落ち着いた雰囲気のべっ甲柄。丸みのある形のベーシックなものだ。

私は前者が気になっていた。後者はありきたりな感じもして、見栄が捨てきれない私には物足りなかった。

「どっちがいいでしょうか…」

「どちらもお似合いです。限定品の方は、お客様のカッコ良さ、スマートさを引き出しますし、べっ甲柄のタイプはお客様の女性的な柔らかさが際立ちます。その上で、私は、べっ甲柄のタイプを断然お勧めします。とても似合ってらっしゃいますし、素敵です。」

定員さんは、メガネの奥の強い眼差しで私を見て、毅然とした態度でハッキリとそう言った。

照れるやん。

そして私は、素直にそれに従った。

確かにその眼鏡は私にとてもよく似合っていた。「似合うメガネを選んで下さり、ありがとうございました」とお礼を言ってお店を去り、1週間後に仕上がったメガネを取りに行った。


会社にかけていくと、「あれ、aotenさんメガネ?何かいい感じの雰囲気ですね〜」と後輩から言われた。

素直に嬉しかったが、「今花粉症でさぁ、コンタクトすると目がちょっとかゆいねん」とか何とか言いながら、照れ隠しした。

そして、花粉の季節が終わっても、結構な頻度でメガネをかけているのだ。



#エッセイ, #日記, #メガネ, #アラレちゃん, #ラストエンペラー

    #メガネの三城, #白山眼鏡 ,#金子眼鏡



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キリン!あ。
15
2匹の愛猫と仲良く同居。趣味は絵を描くこと。一番好きな本は「ナンシー関の記憶スケッチアカデミー」。
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