まだ私は生きている

祖父母の家の猫が死んだ。

大阪から帰ってきてから結婚するまでの期間私は祖父母の家に住んでいたので、そこそこ仲が良かった。叔父の次には懐いてくれていた。

ほとんど家にいた私は彼女とよく遊んだ。遊んでくれていたのだ。彼女はとても賢い猫だった。
ドアも柵もない庭から決して出ることはなかった。祖母が寝室に呼ぶと、眠たくなくてもついて行き、祖母が寝付くとリビングに戻ってきて夜食を探す私とよく顔を合わせた。

先日私は2度目の自殺未遂をした。
大量の薬を飲み、浴槽に水を貯めて血の出る腕を浸していた。
恋人と友人が駆けつけた時には私はベッドにいた。お布団大好きっ子でよかった。浴槽にいたままだと私はきっと死んでいた。

腕を12針縫い、実家に帰る車で彼女の死を聞かされた。涙が止まらなかった。

私が苦しくて苦しくてもがいていたあの頃、そっと仲良くしてくれた彼女に、もっとたくさん愛を伝えたかった。感謝を伝えたかった。

子どものように泣きじゃくる私に母は、そんなに泣くならあなたも自分の命を大切にしなさいと言われた。

一人になった私に、この1年でたくさんの人が私と仲良くしてくれた。まだこの胸にあるあたたかい愛も感謝も伝えきれていない。単純だが、もう少し生きようと思った。

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