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23 30's Drive

 ひどく暑い
 まだ8時を廻ったばかりだというのに
    夏の日差しはまるで真上から照りつけているかのように強い
 冷める暇もないアスファルトは
 もう陽炎が揺れていまにも溶け出しそうだ
 相変わらず車は動かない
 いつものことだ
 わかっていながらイライラする
 駅から吐き出された人達が洪水のようにスクランブル交差点を渡っていく
 急ぎ足で
 きっと大事な用があるのだ
 ビルの屋上に付いた広告に目がとまる
 ”ニュ-アルバム Now on Sale!”
 昔彼女が好きだったシンガ-
 結婚と離婚を繰り返し髪を切りギタ-をエレキに持ち替え
 ドラマにも出て結構人気があるらしい
 まだ彼女はCDを買い続けているだろうか
 のろのろと動きだす
 飲み屋街の裏通りが見える
 堆く積まれたゴミ袋の山
 つい何時間か前まで起きていたはずのその街は
 すっぴんを白日に晒すのを恥じるかのように静まりかえっている
 昨日30になった
 いつもそうだ
 その歳のイメ-ジはひどく大人のくせに
 いざ自分がなってみると拍子抜けする位なんでもない
 多分歳というのは自分でケリをつけていくしかないものなのだろう
 中身がないのは誰のせいでもない
 何をすればいいのか
 そればかり考えていた
 いや
 考えているフリをして酔っていただけかもしれない
 決定することを保留して保留して保留してここまで流れてきたけれど
 勿論ここはどこでもない
 生きていくことは車の運転に似ている
 道はどこにでも続いているが
 目的のないドライブはどこにも辿り着くことができない
 とりあえず今朝の私には目的がある
 胃の検査結果を聞きに病院へいくという立派な目的が!

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