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使いまわしの美学【ぼくのゲーム業界20年史】

最近、自分のプロフィールを整理しようと思った時に、そろそろゲーム業界で働いて20年になるんだなぁという事に気づきました。

僕は1980年代生まれ。
小学1年生でファミコンを買ってもらってから、ゲーム機の進化とともに成長してきました。
そんな僕が大学卒業後、ゲーム業界で過ごした20年をゆるっと振り返っていってみようと思います。

堅い話は苦手なので、「ゲームの開発ってこんな感じなんだ〜」くらいのノリで楽しんでいただければと思っております。

ゲームクリエイターは、意外と普通の会社員だった

ゲーム業界への入り方はいろいろあると思うのですが、僕は普通に新卒のゲームプランナー採用に応募して就職しました。

ゲーム専門学校ではなく、普通の情報系の大学に通っていたので、ゲームの作り方なんてどこでも教えてもらえません。本やネットの情報を読んで、「企画書・・・?」くらいの知識量で書いたゲームの企画書を、新卒募集しているゲーム会社に送り付け、10社目くらいでなんとか採用していただく事ができました。

「ゲームクリエイター」というと、「漫画家」や「ミュージシャン」のような芸術家のようなイメージが湧いてきますが、実際には普通の会社員です。

月~金が出勤日で、タイムカードを切って、お給料は月給でいただく。仕事の中身以外は、一般的なサラリーマンと同じ感じではないかなと思います。

新人クリエイター、研修を受ける

うちの会社の場合は、入社式の後、まずは2カ月間の研修がありました。

プランナー志望と、プログラマー志望と、デザイナー志望、
あわせて30人くらいの新入社員で、最初の1カ月ほどでゲーム開発の講義、残り1カ月ほどで3チームに分かれてゲームを1本作るという研修を行いました。

この時のお題は「すでに発売されたソフトの素材を使って続編を作る」というテーマでした。

ちょうどゲームがPlayStaionから、次世代機のPlayStation2へと移行し、「美麗グラフィック」とか「まるで映画のような映像」が、ゲームソフトのセールストークになっていた時代です。

ゲームのボリュームが大きくなっていき、ソフト1本の開発コストが大きくなっていっていたため、「コストを抑えて作る」とか「ゲームエンジンを使いまわして効率的に作る」とか、そういう開発が求められ始めていたのだなと思います。

■開発リソースの流用
前作で使ったキャラクターや、背景、システムなどを流用することで、開発コストを抑えてゲームを作ることができます。

ゲームシステムは共通だけれど、キャラクターのデザインが異なる「無双シリーズ」や、新作では旧作のモンスターに加えて新しいモンスターやクエストが増えていく「モンスターハンター」などもリソース流用の一例です。

使いまわしは手抜きではなく、工夫であれ

流用というと「使いまわしじゃん」「手を抜いている」というネガティブなイメージもあると思います。ですが、すでに存在している物を使う事自体は決して悪いことではないと思います。

たしかに、晩御飯が毎日同じカレーだったら「またカレーかぁ」という気持ちになるでしょう。

でも、1日目はカレー、2日目はコロッケをトッピング、3日目はカレーうどん・・・とすることで、「晩御飯を毎日、0から作る」というコストを抑えつつ、「体験を変化させる」事はできると思います。


この頃に出たソフトだと、アトラスの「ペルソナ2」が、おもしろい作りをしています。

「ペルソナ2 罪」では、高校生の主人公「周防 達哉」として、その仲間たちと街に起こった怪事件を解決していきます。

ペルソナ2_罪3

その1年後、続編として発売された「ペルソナ2 罰」では、前作のヒロイン「天野 舞耶」を主人公として、同じ街、同じ世界で別の物語が展開していくことになります。

ペルソナ2_罰3

前作の主人公である達哉を始めとするキャラクターが再登場したり、前作で訪れた場所を別の形で尋ねる事になったりと、同じ素材を使っている事を逆手にとったようなゲーム構造となっています。

また、「罪」では高校生がメインのキャラクターだったのに対し、「罰」ではそれを取り囲む大人達が物語の中心にすることで、同じ世界を視点や立場を変えて見せるという工夫もうまいなぁと思います。

冷蔵庫の残り物でおいしい料理を作る

時間も人も、リソースは有限です。

限られた時間、手元にある素材
それらを生かして最高のパフォーマンスを生み出す事、
それもまたゲーム開発者としての手腕だと僕は思います。

最高の食材を使い、手間ひまをかけて作ったレストランの料理は美味です。ですが、毎日3食・外食を食べる事は難しいでしょう。

家計や時間を考えながら、ひと手間、ひと工夫をして毎日の「おいしい」を作る。冷蔵庫の残り物でおいしい料理を作るような工夫と発想の積み重ねが、ゲーム開発の足元を支えているのです。

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