「脱!Disneyあるある」 ミラベルのここがすごい
今回は『ミラベルと魔法だらけの家』の映画としての魅力ついてお話ししたい!!!
こんにちは。ミラベルガチ勢、アオパンです。
前回のnoteは、ネタバレに配慮しつつ楽曲に関してのみ書いた。
もしかすると読んでくださった方の中には「ミラベルの楽曲が評価されているのはわかったけど、それ以外はどうなん?」と思う方がいたかもしれない……。
普通に考えたらニッチな音楽語りよりも先に語るべきだったな……。反省!
というわけで「ミラベルのストーリーとかはどうなの?」へのアンサーをしたいと思う。
「脱Disneyあるある」 なチャレンジングストーリー
まず伝えたいのは、この作品が相当チャレンジングなものだということ。
数多くのヒット作を打ち出しているディズニーだからこそ、定番というかお決まりというか、ヒットのセオリーみたいなものがある。
魔法のキス。
誘拐・監禁されるプリンセス。
親のいない主人公……。
過去だと「王子様を夢見て待つ」がセオリーで、現代のディズニーでは「自分の人生は自分で決める!掴み取る!」という凛とした女性像が主軸だ。
意志ある可愛い女の子が、意外にもヒーローより前に出て敵を倒しちゃう……。そんなストーリーって、最近わかりやすく面白いよね。フライパンで殴るとかさ。
それと同時に天下のディズニーでも「それをすると映画として成立させるのが難しいから、基本やらない」と考えられてきた項目もある。
でも、何を思ったか「普通ならやらんだろう」というチャレンジングな設定で映画を作っちゃった。
そんなベンチャーマインド(失敗を恐れずリスクを取る思考)溢れる人たちが、ミラベル制作チームなのです!
①ヴィラン不在・冒険なし
打倒すべき明確な悪役がいないので、勧善懲悪的なわかりやすい解決に落ち着くことができない。爽快なアクションシーンも入れられない。冒頭で提示されるリアルで根深い問題について、それぞれがどんなふうに解釈・解消するか?という精神面・関係性が主軸となる。旅に出ないので、ストーリーはほぼ家の中で完結する。行動範囲は多分トイ・ストーリーより狭い。
②題材が総勢11人の大家族
従来のディズニー作品では話をシンプルかつ深いものにするために、ネームドキャラクターを削りに削るのが一般的らしい。リメンバーミー(Coco)も大家族だったけど、結構モブみの強いメンツも多かったので、家族全員をキャラクターとして認識させながら進めるストーリーは異例の試みと言える。
③主人公が普通の女の子
ディズニーヒロイン初のメガネっ娘属性で、美少女でもなく、魔法などの特殊能力を持ってない。でもコンプレックスは持ってる。
プリンセスでもないし、両親は健在だし、誘拐されないし監禁されないし戦わない。広告的な観点で言うとビジュの力は弱いが、反面めっちゃリアルに人間を感じる。
ついでに言うと今回は恋もほとんど描かれない。
モアナとズートピアという大ヒット作を送り出したら、今度は新しくて難しいことにチャレンジしたくなったのかもしれない。おもろい。好き。
中でも、私がめっちゃ好きなポイントについて語らせてほしい。
ほぼ家の中の話なのにアドベンチャーを実現
前述の通り、ストーリーはほぼ家の敷地内で完結する。
家族の精神に重きを置いているので、あまり遠くに行くと話が進まないもんね。
でも「ミラベルと魔法だらけの家」では、おそらくみなさんが頭の中で思い浮かべる「家の中」という枠には収まらない広さを実現している。
まず、ミラベルたちの住む家は魔法のかかった家で「家よりも部屋の中の方が広い」。うん、意味わかんない。
魔法の家にある魔法のドアをくぐった先には「その部屋の持ち主の特性を反映した世界」が広がっていて、それは人によって花畑だったりジャングルだったりする。ジャガーに乗って走り回ることができるし、落ちたら確実に無事では済まない高さの椰子の木に登ることもある。
これって「家の中の話」と言うには、いささかアドベンチャーすぎるよね。
しかもミュージカルアニメの特性として、歌っている間は場所や時間の制限が取り払われることもある。
心象風景をそのまま表現するからこそのダイナミックな場面転換が次々行われて、アクロバティックだ。
ケルベロスと戦い、乗った船が沈没の危機に見舞われ、ハリケーンに襲われ、空を飛ぶ。
視覚的に飽きない工夫が随所に凝らされているから、しっかり楽しめるはずだ。
本気で感情移入できるヒロインだから友達になりたい
確かにミラベルは美少女ではないし、特殊な力や才能もなく、高貴な身分でもない。大きなメガネをかけた、天然パーマでそばかすだらけの丸顔コロンビア人。
パッと見の印象で「痺れる憧れるゥ!」とはならない少女だけれども、私はこの子を「友達にしたいヒロインNo.1」として殿堂入りさせたい。本当に、竈門炭治郎くらい優しい子なんだよ……。
Disneyには行動力や決断力で魅せるヒロインはたくさんいると思うけど、ミラベルの魅力はその傾聴力と受容力にある。
映画冒頭を見てもわかるのだけど、ミラベルは街のみんなから親しみやすい存在として愛されている。とにかくみんなしつこいぐらいミラベルに話しかけてくるし、ミラベルの家族のことを当人に聞かずにミラベルに聞く。多分尋常じゃなく話しかけやすいオーラを放ってるんだろう。
さらに、鉄壁のATフィールドで周囲にセルフブランディングしている家族たちも、ミラベルにだけは本音を話せちゃう。飾らず裏表のない雰囲気と、本気で向き合おうとするミラベルの姿勢が相手の心を開かせるのだと思う。
つまりとんでもない聞き上手なんだ。絶対友達になってほしい。
しかも相手から引き出した本音を聞いた時の、ミラベルの反応も最高。
自分が誤解していた場合は素直に反省し、新しく知った相手の本音を全肯定する。相手の気持ちに寄り添って優しい言葉をかけ、さらには自分のトラウマを差し置いてでも、勇気を出して貢献するのだ。
ただ、彼女も聖人君子というわけではない。嫌なやつが鼻につくパフォーマンスをしてたらジト目で腕組みしてしまう普通の子。
でもその普通の子が、恋愛感情も損得勘定もなく、他者への思いやりだけで気丈に振る舞い、ひたむきに誰かのために立ち上がるからこそ、強く感情移入もできてしまう。
お母さんとお父さんの育て方がよかったね……。
ミラベルの無意識領域、めちゃくちゃ綺麗なんだろうな。ごめん、ちょっと涙出てきちゃった……。あとは本編を観て確かめてほしい。
頼む、字幕版を見てくれ
最後に私からお願いがひとつ。
吹き替え版の声優陣も本当に素晴らしいんだけども、できれば字幕版を見てほしい。
なぜならひとえに、ミラベルと日本語の相性が悪いから……。
今作はミュージカル映画であり、感情の揺れや大切なテーマがガッツリ歌詞に込められている。
一方で英語と日本語では歌の中に込められる情報量が相当違う。
省略されてしまった部分や表現できていない部分が、尋常じゃなく多いのよ…… 。
和訳歌詞を考える上では、当然発音が歌として聴きやすいか考えないといけないし、歌と画面の整合性を取るために、リップシンクといって唇の動きと発声を合わせる必要がある。つまり「ここではこの母音を使わないといけない」みたいな制約も発生する。正直キチィ。
たとえばあの「Let It Go」も、和訳だと原語版よりかなりポジティブな内容になっているのをご存知だろうか。
ニュアンスとしては、日本語版だとご存知の通り「ありのままで、私らしく生きていく!」っていうポジティブな感じだけど、原語版だと「どうでもいいわ、私ってどうせバケモノだし!ははは!」って感じのネガティブレリゴーなのだ。しんど。
ニュアンスはかなり変わってるけど、それでも見る人にとって違和感のない流れになっているのがポイント。そうやって物語全体の整合性や国民性を考慮して歌詞を考えている方々には、本当に頭が下がる。ミラベルに関しては、それが本当に難しかったんだと思う。
そんなわけで「情報量が落ちにくい字幕版で見た方が楽しめるよ!」というおすすめをさせてほしい。
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この物語では、遠くまで旅に出たりしないし、新しい人物との出会いもほぼない。命を狙ってくるヴィランズもいないし、世界を揺るがすド派手な困難もない。
けれど、登場人物は一度ではちょっと覚えきれないくらい多いし、それぞれの心理的な掘り下げがメインで、自身と照らし合わせながら感情移入できる。ディズニーには珍しいタイプの作品!
「普通なら難しいからやらないこと」に、あえてチャレンジしているこの映画。どんな作品に仕上がっているのか気になりません?
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もしこの記事きっかけで観てくださった方がいたら、ぜひコメントで感想お聞かせください!
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