(詩)片隅の草の花のように

春なんて言葉も
知らない草木でも
にこにこ
笑っている気がする

春は魔法のように
野に街に微笑みを
連れて来るから不思議

人見知りなきみは
高嶺の花であろうなど
望みもしなかったのに
その容姿の美しさゆえ
男たちが放っておかなかった
他の女の子たちから妬まれた

何をしても
目立ってしまうきみは
段々と自分の感情を
押し殺していったね
クリスマスもバレンタインも
嫌いになった

男たちは
きみに真紅の薔薇や
ゴージャスな蘭の花束を贈った
きみに似合うと思ってね

だけどきみの微笑みはいつも
冬の街角に立つ
マッチ売りの少女のように
強張っていた

そんなきみにも春は訪れる
春は確かにやってくるから
薄暗かった街の片隅で
じっと寒さに堪えていた草が
ほら、
白い小さな花を咲かせたよ

春という言葉さえ
知らない草の花が
きみに笑いかけるように
風に揺れ、にこにこ
こんにちは、と
挨拶するみたいに

待っていたんだね
ずっと待っていた春だから
きみにも笑ってほしい

片隅に咲く
草の花のように
生きたかったきみへ

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