ひまわり畑

とけてゆくよ
海の波に、風に
木々のざわめきに
人々のかんせいの中に

ゆっくりとしずかに

夏の日差しに
降りしきる雨に
降り積もる雪に
舞い踊る落ち葉の中に

かえってゆくよ
ひっそりとやさしく

誰も気付かないうちに
どこでもない場所へ
いつでもない時間の中に
なにものでもない、ぼくへと

むかし、ぼくと呼ばれた
ひとりの少年が
ひまわり畑の風になって

映画の中で見た
街をかけぬける
ひまわりたちの
はしゃぐ声がきこえる
みんな、おしゃべり
ぼくに陽気に話し掛けてくる
ぼくが、風だと信じて

明日は仲間になるかも
しれないというのに


いろんなもの
かなしみとよろこび
なつかしさと面影
いろんなものが
きれいに整ってゆくよ
お行儀よく

おもちゃ箱に
しまわれてゆくように

けれどぼくは
永遠に無邪気な
少年のままだから
いつだって
取り出せるけどね

忘れてた
みんな忘れてた
世界は、ひとつだったんだ
過去も未来も
夢も現実も
世界もぼくも
かなしみもよろこびも

いったことのある街も
いったことのない街も

みんな
ゆっくりと
しずかに
かえってゆく

昔、映画で見た
ひまわり畑の中へ


※映画 ひまわり


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