(詩)初めての裏切り、初めての失恋

初夏だった
中学一年の初夏だった
初恋はまだだった
誰かを本当に好きになる前の
初夏
毎日慣れない制服に
汗だくの日々

クラスのみんながまだ
互いに互いを知らないせいで
なんか、あいつ真面目そう、ってノリで
学級委員長に選ばれてしまったぼく

クラスメイトのきみは
小学校から問題児扱いの女子で
みんなは直ぐにきみをいじめ出した
他のクラスはおろか
二、三年の生徒たちも
トラブルメーカーのきみを
一目見ようと
昼休みのぼくのクラスの廊下は
いつも人だかり

一人の男子がきみのスカートをめくって
大騒ぎのパニック状態
その時学級委員長としての
責任感に燃えたぼくは立ち上がり
その男子生徒を注意した
注意、した

それから、さあ大変
冷やかしの嵐
ヒューヒュー、学級委員長、
もしかして◯◯さんに惚れてるね!
ぼくもいじめの標的にされた

小心者のぼくは
次の日から、しかとした
きみを、しかとした
生まれて初めて人を、しかとした
すがるようにぼくに目を向ける
泣きそうなきみの視線を、しかとした
生まれて初めて誰かを、裏切った
人を、裏切った
きみを……

だけどきみは
ぼくの教師だった
ぼくの人生の、人間としての
初めての本当の、教師だった
きみは生まれて初めてぼくに
ぼくも醜い人間だと
教えてくれたから

あの時のきみの眼差しが
あの時のきみの眼差しは
今でもぼくの胸に、突き刺さったまま

初夏だった
すべてがまぶしい
太陽の陽射しが
痛いほどに眩しくて
泣きたいほどの初夏だった

初恋もまだだったのに
きみに失恋したような気がした

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