見出し画像

『ゴジラ-1.0』のハイブリッド感

もう観たい人は観たでしょうからネタバレ込みでいいと思いますが、『ゴジラ-1.0』の作劇が非常に巧みだったのでここに記しておこうと思います。

みんな大好きなゴジラ映画ですが、70年に渡って40本近くの作品が作られているわけで、物語の内容が被らないようにするだけでも大変だと思います。そこで今回は終戦直後という新しい舞台が用意されました。

私はこれ実は不安だったんですよね。なにかこう、辛気臭い内容になってしまうのではないか、戦争の悲惨さと平和の尊さを訴えるだけの、エンタメ色の薄い作品になったら嫌だなと。けど、それは杞憂でした。

まず、ゴジラ映画の基本である、破壊と迫力のシーンが圧巻でした。男の子は単純なので、怪獣が大暴れしているだけでほとんど満足なのですよね。それに加えて幻の戦闘機や戦争を生き残った歴戦の艦船が出てくれば、これはもう大興奮なのです。ちゃんと男子の欲求を満たしてくれています。

しかし今回はそれ以上に女子の欲求を満たすストーリー展開に力が注がれていました。主人公は復員軍人で特攻の生き残りなのですが、彼の心に秘めた想いを中心として物語が展開していきます。ゴジラを中心として人々が右往左往するのではなく、個人の感情を中心としてその解決策にゴジラが存在するのですね。

これは女性が入り込みやすいと思います。世界の危機より私の感情という方が理解しやすいでしょう。そういった「男の子好み+女の子好み」の融合が映画の中で果たされていました。そういえば、ゴジラのデザインも「日本ゴジラ+ハリウッドゴジラ」のいいとこ取りをした感じ。

あらゆる意味でハイブリッドなゴジラ映画。

それが「-1.0」の世界だったと思います。やや個人のストーリーに偏って破壊と戦闘のシーンが短く、スケール感を欠く印象はありますが、ちゃんと双方満足のカタルシスを与えてくれたので私は好きな作劇でした。

特に今までゴジラ映画に興味のなかった女性にはお勧めだと思います。一つの素材、一つのテーマから、いくらでも新しい物語を創り出せる。やっぱりプロって凄いですね。