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『Dr.STONE』と「欲しい」の力

週刊少年ジャンプで好評連載中だった漫画『Dr.STONE』の最終巻が発売されました。強豪ひしめくジャンプ連載陣の中で常に人気上位で、テンションの高いまま物語を完結させたことは大したものだと思います。

全人類が石化してしまった世界で、ゼロから科学文明を取り戻すという壮大なストーリー。この漫画で特筆すべきなのは主人公達が常に「欲しい」を行動原理にしていたことでしょう。何もない原始の世界から石鹸、鉄、火薬、ガラス、コーラ、自動車、果てはスマホや○○○まで…。次々に「欲しい」を形にしていく姿には爽快感がありました。

現代を生きる我々は「もう、何もいらないんじゃないか」という思考に陥りがちです。これだけモノに溢れた時代に、まだ「欲しい」はさすがに欲張り過ぎではないのか…。けれども、「欲しい」は人間の生きる力の源でありエネルギーの源泉だと思います。小さい子供を見ていても、「欲しい」が発するパワーには圧倒されるものがあります。

落語には欲求に素直な人間がたくさん出てきます。酒が飲みたい、美味しいものにありつきたい、金が欲しい、遊郭で遊びたい、芝居が好きで堪らない…。皆、失敗しながらも、愛すべき存在として描かれています。人間が正のエネルギーで動く時は、それが成功しようが失敗しようが、他者は共感を覚えるのではないでしょうか。

新しい落語を作ろうと思っても、人間の欲求とは絶対に切り離せません。昔からずっとそうなのでしょう。時代を超える普遍性のヒントの一つがここにあるかもしれません。

「欲しい」を次々と実現していく、人間の生をどこまでも肯定するような漫画『Dr.STONE』。全26巻完結。お勧めです。