シャツと住所と焼き鳥と

ましてやこれだけ価値観の多様化と言われる現代において、ひとつの無難なものが多くの人々を受け容れる、ということ自体に、無理が生じていると思うのです。言うまでもなく公共とは本来、セーフティネットです。1枚のネットで掬いきれないなら、2枚3枚と、違ったタイプがレイヤーになっていたら、どうでしょう。

田中元子「1階革命」


2024.8.23。自宅療養131日目。6:30起床。少しづつ睡眠時間が延びていて嬉しい。ショートスリーパーだからと自分を規定していたが、睡眠時間は8時間がベストで、それ以下でも以上でもよくないらしく、なるべく8時間に近づくようにした。やり方は簡単で、寝る前に明日は何時に起きます!と強く願って寝るだけ。潜在意識に命令を出してあとは放っておく。多分効果はあるはず。

自分一人のために料理を作るのが本当に億劫で、また簡易的な食事になっている。気づけばパスタばかり食べていた。菓子パンは意識して減らしているが、それでも時々は食べてしまう。考えても埒があかないので、メニューを決めることにした。迷う時間を与えない。迷いは様々な感情を喚起させてしまう。朝はご飯・味噌汁・納豆もしくは卵、昼は麺類かサラダもしくは食べない、夜はご飯と味噌汁と豆腐。夜はもう一品加えてもok。炒め物かきんぴら系。しばらくはこれでいこう。やる事が予め決まっていれば、必要な時間になれば勝手に動き始める。アクションする前に迷い始めるから全ての工程がゼロベースになってしまうのだ。

散歩に出かける。図書館にも寄る。UNIQLOで安いシャツを買う。あなたはもうおじさんなんだから、シャツを着なさい、シャツを。眼鏡が似合う人はシャツも似合うから。そう言った彼女は柄物のシャツをよく着ていた。第二ボタンまで開けて、薄い胸元がギリギリ見えず、フランスの女優さんのようだった。心の中でシャルロットと呼んでいた。そんな記憶を振り払ってどんどん歩く。神社に行く。賽銭を差し入れ手を合わせる。あんたな、お願いするときに住所と名前言ってるか?神様どこに行けばいいかわからんから、ちゃんと言うとき。友人の占い師にそう言われてから、律儀に守っている。まあ確かに言う通りだわ。公園まで歩みを進めて借りた本を開く。この暑さで読む気がおきない。小泉今日子が本について語っている。江國香織はどうしていつも髪がバサバサのまま写真に写っているのだろう。

ママー!焼き鳥が食べたいよー!とすれ違い様の小学生が言う。だめ、今日はハンバーグだから…まで聞こえたが、そのあと小僧は何と言ったのだろう。焼き鳥ねぇ、そう言えばしばらく食べてないな。焼き鳥かぁ。焼き鳥。焼き、鳥、とり、ヤキトリ。頭が鳥にジャックされてしまい東急へ向かう。8本ほど買って、ビールも補充する。今日は酒はおまけだと言い聞かせて、借りた本を読みながら冷めた鳥を口に運ぶ。純粋な欲望はどこにあるのだろう。今日もまた人の欲望に感染するのみだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?