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うしみつに眠る

鉢植えの根元についている子株を外したら、思いの外小さかった。植え替えるにも、家にある素焼鉢では少し大きい。小さな鉢が欲しくなった。

食料品の買い物のついでに小さな素焼鉢を見つけた。二つ重ねたものが硬いビニールで包装され、下の棚の奥で影になっている。二つ買い物籠に入れ、食料品と一緒に精算し持ち帰る。対になった素焼き鉢の包装をとき、裏返してみると、安価なせいか、どれも底穴が随分小さい。これでは流石に水が流れにくかろうと、仕事終わりに、工具で底穴を広げていると、零時を回っている。

こんな時間にこんなことをしている人は世界中に何人いるのだろう。今生まれた人の方が買った素焼鉢の底穴を広げている人よりずっと多いのではないか。そんなことを考えているうちに穴の大きさは丁度良くなる。整えた空の素焼鉢を四つ、窓際に整列させる。特別なものでなくても同じ形のものがきちんと並んでいる姿は愛らしい。工具の電源を抜き、工具箱にしまい、手を洗うと、温めた布団に入り、靴下を脱ぐ。

夜明けが早くなったけど、昔ほどそわそわしない。遠くの広い通りを夜間トラックが走る音がする。明日はどんな天気だろう。目を瞑り、いつものように大きなブランコに乗っている自分を想像している。ふわりふわりと高く揺れるうちにゆっくりゆっくり眠りに落ちていく。




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