見出し画像

vol.34 危険を乗り越えて作られた「ボーン・レコード」とは?


「ボーン・レコード」とは?

みなさんは、レントゲン写真で作られたレコードを見たことはありますか?


ボーン・レコード Ⓒ Photography by Paul Heartfield

最高にカッコくないですか?!
この「ボーン・レコード(肋骨レコード)」は見た目が格好良いだけではなく、様々な危険を乗り越えて作られたレコードです。

なぜ「ボーン・レコード」が作られたのか?

ボーン・レコードが作られたのは、第二次世界大戦後(1940~ 1960年代)、冷戦時代のソビエト連邦、現在のロシアです。当時のソビエト連邦では、国民は文化やアートを楽しむことを制限していました。

音楽もそのひとつです。ジャズやロックなど西側諸国(アメリカ、西ヨーロッパ)の音楽と一部のロシア音楽を聴くことを禁止していました。理由は2つあります。

  1. 西側諸国の音楽:西側諸国はソ連の敵対国だったから。

  2. 一部のロシア音楽:作曲したアーティストは戦後、西側諸国へ移住したので、国家は彼らのことを「ソ連の裏切り者」と考えたから。

当時のソ連では、これらの音楽を聴くと国家に逮捕される状況でした。そんな中「自由に音楽を聴きたい!」と思った音楽コミュニティの人たちは、自分たちでレコードを作ろうと考えました。ただDIYレコード作りは、簡単にはいきませんでした。

最初に音楽を録音するためのレコードをゼロから作る必要がありました。そこで代用品として使用されたのがレントゲン写真です。

レントゲン写真を使うアイディア、斬新だなと思いました。当時は、レントゲン写真はすぐに手に入れられたのでしょうか?今の時代だと入手困難だと思うので、どのようにレントゲン写真をゲットしたのか気になります。

そしてアナログ・レコードに音楽を録音するには、レコードに溝を入れる必要があります。ですが、コミュニティの人たちは溝を入れる方法を知りません。ではどのように、レントゲン写真に溝を入れたのでしょうか?

彼らは、レコードに溝を入れるための機械を開発しました!「溝を入れる方法が分からないのなら、技術を学んで機械を開発しよう!」という行動力、私も見習いたいです。

このように音楽に触れたいコミュニティの人たちの熱意によって、ボーン・レコードが誕生しました。

制限のある中で生まれてくるもの

制限のある状況で作られた作品は、作家が試行錯誤した過程や「コレを手に入れたい」「自分はこうなりたい」など作家の感情や反発心が作品に滲み出ていると思います。

ボーン・レコードは、国家に逮捕されるリスクのあるなか作られたので、コミュニティの音楽に対する気持ちが強くなければ生まれなかったと思います。

今の時代は、スマホがあれば簡単に音楽に触れることができます。自分の気分に合わせて曲をスキップしたり、同じ曲を繰り返し聴いたり….。ソ連時代の国民が現代に来たら、腰を抜かしそうです。

ボーン・レコードの歴史を通じて、自由に音楽を聴くことができる幸せに気付くことが出来ましたし、コミュニティの行動力も刺激になりました。厳しい状況に屈せず、自分たちがやりたいことを達成するために試行錯誤することは大切なことですね。いつかボーン・レコードの実物を見てみたいです。


【参考】
BONE MUSIC, 2019,「BONE MUSIC展」,
<https://www.youtube.com/watch?v=n9bv4KT9kTA&t=31s>

FASHIONSNAP, 2019, 「レントゲンがレコードに、旧ソビエトで誕生した「ボーン・ミュージック」がテーマの展示をバツアートギャラリーで開催」, <https://www.fashionsnap.com/article/2019-03-07/bone-music-exhibition/>

ローチケ「BONE MUSIC展 ~僕らはレコードを聴きたかった~」, <https://l-tike.com/event/mevent/?mid=418521>

Real Sound, 2019, 「ボーン・ミュージックが伝える音楽への情熱とユーモア 『BONE MUSIC 展』開催に寄せて」, <https://realsound.jp/2019/04/post-354247_2.html>

X - RAY AUDIO, 「BONE MUSIC」, <https://www.x-rayaudio.com/>


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?