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ざっくり学ぶ、輸入管理のきほん

今回は輸入管理についてです。

輸出企業が多い日本では輸出管理は法定の体制を整えている会社は多いと思います。しかしながら輸入の管理体制となると明確な規定は存在しないため全く整っていない企業が多いのでは無いかと考えました。

と言うのも輸入事後調査で慌てる会社が多く、事後調査の相談を毎年受けています。輸入管理をどうすればいいのかのノウハウが少ないと思いますのでこの記事を確認して、突然の立ち入り検査にも耐えられる様に準備をしましょう。


輸入管理の考え方


輸入については荷主は関税法で多くの規制を受けます。ここを押さえておけば大半の管理が出来ると言っても過言ではありません。
そして輸入は輸出と異なり納税が必要であること。この納税の管理をする事が輸入管理の重要なポイントです。

輸入管理には
・適切な輸入申告
・適切な納税
・その他輸入に関わるコンプライアンス

が必要です。

この体制を構築すればいいと思います。

体制


体制構築には以下の事項を定めておく必要があります。

・輸入責任者の任命
・輸入責任者の責任と権限の明確化
・輸入管理担当者の選任
・輸入管理・輸入プロセスのルール策定

これらをまず固めることが第一歩です。責任は与えたが権限がない、権限は使えるが責任が明確ではない、という状態では上手く管理組織が機能しません。これらを明文化して体制を内外に周知する事が重要です。
そして体制を維持しルールを周知徹底するためにも、構築後に以下の2点もルールに盛り込むべきでしょう。
・輸入教育
・輸入内部監査

これだけ明文化出来れば管理の半分は整います。まずは組織設計をしっかりと押さえていきましょう。

帳簿と書類保存


輸入を行う企業は、関税法94条で書類の保存と帳簿の備え付けが義務つけられています。

・保管期間: 帳簿=7年、 書類=5年
・保存書類: 輸入許可書、インボイス等の通関書類、注文書、契約書、電子取引情報(EDI、メール、チャット等)等

この帳簿と書類保存は確実に実施しなくてはいけません。これらを怠ると罰則もありますのでご注意ください。ところが各部署に任せていると大体漏れが発生します。事務局で一本化して帳簿をつけましょう。

書類保存もパターン化して、どのようのケースで、どのように保存するかを決めていきましょう。紙でしか入手できないもの、メールで取得できるもの、様々なパターンが想定されます。ここに莫大な労力を掛けても仕方がありませんので、より簡単で確実な方法を検討するべきです。

契約書や注文書は別途保存期間を定めている企業も多いと思いますので、紐付け出来ればそれでも問題ありません。ただし、保存期間が関税法に合致していない可能性がありますので、もし期間が一致していない場合は、これを機会に見直すことをお勧めします。

今回は輸入の話ですが輸出についても帳簿5年、書類5年の保存が必要ですのでこちらも忘れずに!

納付書管理


納税の流れを管理する事でも輸入の状況が把握できます。
各部門で納税の支払い業務を行なっているのであれば一本化する事で輸入状況が把握できます。管理体制の事務局で納税業務、納付書管理を引き取るという対策は有効だと思います。

また昨今では輸入関税・消費税の立替問題がクローズアップされています。この対策として延納の導入やリアルタイム口座の導入を検討する事もお勧めします。


他法令


輸入で難しいのは他法令です。30近い法令の規制を受けます。これらを確認する必要がありますが、特定の製品を輸入している方が多いと思いますので、実際に関わるのはそのうち多くても3つ程度です。新商品の初回輸入前に確認しておけばあとは反復の手続きです。最初だけ労力を掛ければ大丈夫でしょう。

代表例を紹介すると
食品:食品だけでなく食器、食品を加工する機器についても届出、検査が必要(食品衛生法)
医薬品:医薬品について輸入販売許可が必要(薬機法)
動物製品:動物および動物製品について検査が必要(家畜伝染病予防法)
植物製品:植物について検査が必要(植物防疫法)
高圧ガス:日本の規格にあった高圧ガス容器である事を証明必要(高圧ガス保安法)

などなどです。詳細は法令、税関HPなどをチェックして下さい。
サンプルであっても適用されるものが多く税関への申告とは別に届出、許可承認が必要です。

それぞれ輸入する商品が他法令に該当しないかの確認をプロセスに盛り込んでいきましょう。

評価申告


評価申告の管理は輸入管理の上で非常に重要です。
というのも事後調査での申告漏れの指摘の多くは、この評価申告漏れだからです。一定の知識が無いと申告すること自体に気が付きません。難解な制度ですので窓口を一本化して社内を取りまとめる必要があります。

例えば
海外サプライヤーに材料を支給し加工後、日本に輸入する場合です。
加工契約、材料支給、輸入オペレーション、それぞれ別部門が実施していたりするとどこかが旗振りをしない限り適切に申告はできません。

これらもプロセスの中に織り込んで、確認していく必要があります。

また材料や型等の支給がある場合には輸入管理だけでは不十分で、輸出も同時に管理していく事になります。ライセンス契約なども申告対象になり、関連する多数の部署への社内教育の徹底も重要になってきます。

通関業者管理


ルールを定めても、輸入申告を実行する通関業者にそのルールが伝わらない事があり、指導の行き渡るよう通関業者を絞って管理する必要があると思います。絞った通関業者には通関委任状を発行しましょう。闇雲に通関業者から要求された委任状にサインをしてしまうと、その後の管理が非常に手間取ります。

次の管理システムで紹介する荷主記事欄への入力依頼も特定の通関業者にお願いする方が間違いがありません。

委任状には、委任する範囲期限を必ず設けて必要に応じて更新、廃止を定期で実施すべきでしょう。

管理システム


件数が一定規模になるとシステムの活用は欠かせません。しかし、どのようにシステム構築するかが悩ましいところです。

内製システム
パッケージシステム
SAAS

正直、どれも帯に短し、襷に長しで、ベストなものは中々存在しません。
どうするかは件数規模、予算規模によって異なりますので各企業にあった最適なシステム構築を目指して下さい。

システム検討の余裕がないという方には以下のシステムも特にお勧めです。
Tradebook
CCIS
これらは輸出・輸入通関の情報がJASTPROコード毎で取得できるサービスです。通関業者に申告書の荷主記事欄への管理番号などの入力を事前に依頼しておくと、このデータが抽出できるようにもなり、非常に便利です。

帳簿の代わりになり漏れることは基本的にありません。コストはある程度必要ですが帳簿を作成する人件費と比較した場合に安価で間違いもなく確実だと思います。輸入だけでなく輸出の情報も取得でき、正確に輸出入がデータで把握できますので、次の対策も打ちやすくなります。輸出入の通関データは評価申告漏れの対策にもなるでしょう。

クーリエ管理


悩ましいのはクーリエ(国際宅配便)の管理です。どこから、いつ、やって来るか分かりません。タームや金額も間違っていたり、その割に申告前に確認行為は一切出来ません。これが輸入者の責任なのか?と思ったりしますが、現状ではどうしようもありません。

また社内でも複数のアカウントをいくらでも作れてしまうため、中々、統制も取れないです。

これらは先ほど紹介したTradebookやCCISで帳簿管理し、怪しいものを事後で確認する、書類を後から取り寄せるなどの対策が良いと思います。

書類を取り寄せた後にShipperへの指導をしたり、必要あれば修正申告もしておくべきでしょう。

クーリエも通関業者ですので通関書類の保存義務があります。書類を出し渋る担当者はいるかも知れませんが、要求すれば必ず貰えます。各社自動のメール配信の仕組みもありますので営業窓口に相談してみてもいいでしょう。

まとめ


いかがでしたか?少々憂鬱になったかも知れませが、多くの荷主がこれらを怠り事後調査後に管理を強化するという話をよく聞きます。その際には多額の罰金も支払っているのが実情です。そうならないためにも日頃から輸入管理の重要性を認識し、管理強化を図っていくべきだと思います。

また物流DAOでは輸入管理について相談も受け付けていますので、お困りの方はこちらからお問い合わせください。

以上、今回はここまで。
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