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物流の価値向上2

前回の物流価値向上で書ききれなかった部分を補足したいと思います。

具体的に物流がどうやって価値向上を実現していくのか説明したいと思います。

それでは早速、確認して行きましょう。


在庫は過剰傾向


物流を語る上で在庫は非常に重要なポイントです。
必要な時に必要なモノを供給する際には在庫、倉庫が無くては安定した生産や販売はできません。

水であれば貯水タンク、電気であればコンデンサーの役割です。流れてくる水、電気、モノはいずれも安定して流れないため、少し貯めておいて、そこから流すことで安定して供給ができます。

在庫・倉庫の役割イメージ(貯水タンクです)

この在庫は過剰になる傾向にあります。欠品を経験してしまうとクレームや機会損失が怖くなり多めに手配してしまうからです。安定供給を目指すのが在庫の目的で、それが故に過剰になるのは仕方がないと言えます。

これを物流の側面から減らしていきます。

在庫削減の効果


具体例を見て行きましょう。

毎月の払出量が500、納入量が500、安全在庫が500で毎月1回の納入の場合を想定します。

月1回納入の場合の在庫線

これを納入回数を月1回から2回にします。

月2回納入の場合の在庫線


更に次の供給が約半月後に可能なため安全在庫も半分の0.5ヶ月分に減らしてみます。

月2回納入+安全在庫1/2の場合の在庫線

以上のチャートを表にまとめると以下の通りです。

納入回数を増やし、在庫を減らした場合の試算

結果、納入回数を増やすことにより、払出=売上は全く変わっていないのですがキャッシュフロー(CF)が好転する事が分かります。

物流費についてはトラック等は回数を増やすと比例して増加しますが倉庫費などは物量に応じての費用になるため単純には倍になりませんので1.6倍として試算しています。また在庫には目に見えない資本コストも実際には掛かっており在庫が少なければこの負担も減ります。

もちろん在庫がこのペースで供給でき、物流費が利益を食い潰さない前提ですが、在庫を減らすと事業性が改善出来るのは一般的に正しいと言えます。

在庫戦略は一つではない


この話を聞くと全てをJIT(ジャスト・イン・タイム)納入にしよう!と言う人が多数います。残念ながら、そんなに簡単な話ではありません。

前述の通り、在庫削減による費用対効果はアイテム毎に見極める必要がありますし、倉庫にも作業能力の限界があります。計算式を作って、数字を色々変えてみると意外と好転しないアイテムが多数ある筈です。例えば安価な製品はだと物流費が大きく上回ってしまいます。

納入回数を増やすべき在庫、安全在庫を減らすべき在庫、在庫を徹底して分析・分類して、それぞれの在庫戦略を練っていく必要があります。

物流の視点を上げる


これまでの試算を見ての通り、物流費は減らすだけが打ち手ではありません。時には増やす事も大切です。企業としてはコストを減らす事が目標ではなく、利益を増やすことが最終目的だからです。全体最適になるように計画出来れば、物流の価値は高まります。

毎年、物流費の削減を指示されてうんざりしている物流担当者も多いと思います。物流費だけでなく在庫、CFと視野を広げて改善を目指してみて下さい。

在庫分析については知識と経験が必要ですが、それほど難しいものではありません。在庫、入出庫のデータを揃えて、何が最適なのか分析してみる事をお勧めします。

まとめ


いかがでしたか?物流が事業性改善に寄与できる事を理解頂けたかと思います。

中には在庫の分析なんてしたことがない、という方も多いと思います。しかし物流の価値を上げるには輸送や保管そのもの改善よりも、その中身を最適化する事の方が重要で効果的です。在庫の最適化はコストダウンに大きく寄与し多くの関係者に利益のある事だからです。各データにアクセス出来る方であれば、是非とも在庫分析を行ってみて下さい。

また物流業者の方で在庫数量は把握できても、金額にアクセスできない人もいると思います。この場合は荷主に在庫データや製品単価の開示協力を要請したり、NGでも輸出入貨物であれば通関データから指標として利用する事も可能です、カタログ品であれば市場価格からの予想を作成してもいいでしょう。

トライアンドエラーで繰り返し話し合いを行えば大きな改善に繋がると思います。色々と工夫してデータ化を試みて物流の価値を上げてみて下さい。

以上、今回はここまで。
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