【イタリア生活】歌手としてのとある一日
イタリア生活6年目
音楽院で勉強を続けながら、最近はコンサートの仕事も少しずつ増えてきた。
わたしはバロック歌手なので教会で歌う機会が多い。
クリスマスやイースターはありがたいことに結構忙しくなる。
仕事は歌の先生から紹介されたり、コンサートに来た音楽関係者が私の歌を聴いてそこから紹介されることが多い。
今回ここに書くのは少し特殊だったコンサートについて。
カプラローラでのマドリガーレ
この仕事は6月に依頼がきてコンサートは7月末に行われた。
マドリガーレとは四、五声からなる無伴奏の多声声楽曲である。
正確にいうとコンサートとは少し違う
ヴェネツィアの劇団がルネサンス期の仮面劇をやるので、そこで挿入歌として歌ってほしいというので、先生がわたしを含めた5人の若手歌手でマドリガーレのグループを作ったのだ。
マドリガーレはセリフの抑揚に合わせて音楽をつけたようなスタイルで、そのうえ複雑な多声音楽なので5人で合わせるのがとても難しい。
一ヶ月間の短い期間で私たちは練習を重ねて、なんとかこの難しい音楽を形にした。
ここまでも大変だったが、今回のコンサートで一番大変だったのは”移動”である。
まずコンサート前々日。
私たちは公開リハーサルのためにヴェネツィアへ向かった。
我々が住むヴェローナからヴェネツィアまでは通常車で一時間半。
しかしこの夏休みシーズン、予想通り渋滞に引っかかり2時間以上の道のりになってしまった。
その後灼熱のヴェネツィアでリハーサルをして、一時間半かけて帰宅。
ここまではまだ大丈夫。
コンサート前日
我々はローマ近くの小都市、カプラローラまで車で行かなくてはいけない。
予定では6時間ほどの道のりで、17時ごろに到着して一休みしてからリハーサルに行くはずが、そうはいかなかった…
まず、道中で昼食何を食べるかで大揉めしてレストラン探しに1時間かかる。
ご飯を食べたら、ジェラートも食べたくなっちゃったなぁ
ずっと高速はしんどいから下道に降りよう!
などの理由で道草を食った結果、到着まで要した時間はなんと8時間半。
ホテルについて荷物をおいた瞬間リハーサルへむかうことに。
時刻は19時半…
2時間で終わるはずのリハーサルも、差し入れを食べたり飲んだり、誰かが台本を忘れてコピーしに走ったり、晩ご飯のレストランが予約できなくてリハーサル中に大騒ぎになったりと、予定通りに行くはずもなく…🤦🏻♀️
結局リハーサルは23時ごろまで続いた。
ベッドで死んだように眠りについたのは深夜一時過ぎという
鬼スケジュール🔥
そしてコンサート当日
なんと当日リハーサルは朝8時から。
朝8時から歌えるか!
と歌い手からは大ブーイング。
会場が観光名所で、リハーサルできる時間が限られていたのだ。
ブーブー言いながらも7時に起きて8時には会場から入りしたのだが、
ここでも設営やらなんやらでグダグダして
結局リハーサルが始まったのは一時間半後
あと一時間寝れたやん。
あぁ、イタリア、、
そもそもなぜこんなにリハーサルに時間がかかるのかというと、
わたしたちの歌うプログラム自体は40分くらいなのに劇の方はなんと公演時間が約2時間半もあるのだ。
つまり2時間半の間じーっと台本を追って自分たちの出番になったらちょこっと歌って、待って待って待って、歌って、待って、歌って…を繰り返す
なので、ものすごく長丁場。
集中力を保つのだけでも一苦労。
さらに辛いのが、この会場インターネットが通じない。
待ち時間にスマホを触らないのは辛い、辛すぎる。
結局その後もギリギリまでスケジュール変更は続き、挙げ句の果てに公演時間までズレる始末。
さすがだよ、イタリア…
まず第一部、我々マドリガーレグループがお客さんの前で演奏。
会場はいわゆるホールではなくて、お屋敷のなかの広い豪華な部屋という感じ。
貴族たちが大きな広間に集まって教養を高めるために音楽を嗜んでいた頃のスタイルそのまんまだ。
その後は舞台裏の別室へと移動。
劇が始まるので各々台本を追って、自分の出番になると別室からバックミュージックとして歌う。
別室でこんな風に歌うのは初めての経験で面白かった。
ちなみに、お客さんの前ではヒールを履いていたが別室では普通のサンダルに履き替えて歌っている(笑
なんだかんだハプニングがありつつも、2時間半の公演が無事終了。
疲労困憊
しかし、これでは終わらない
コンサートで一番大事なのは
そう、打ち上げである。
役者さんの一人が全員をお家に招待してくださって、さらに全員分のご馳走まで用意されていた。
美味しいご飯を食べつつ、それまでドタバタすぎてあまりコミュニケーション取れてなかった役者さんたちや関係者の方々とお喋りする充実した時間を過ごす。
結局疲労困憊していたにも関わらずホテルに帰ったのはまたまた深夜一時過ぎだった、、
そして
次の日、朝6時起きの7時出発でヴェローナへの帰路に着いた。
帰りは7時間の道のり、、
と、こんな感じで今回のお仕事は幕を閉じた。
今回のはかなり特殊な例だったが、どのコンサートでもスケジュール変更や時間のズレはほぼ確実に存在している気がする。
そしてどれだけ時間が迫っていても、バールに寄ってコーヒーを一杯飲む余裕は常に持ってるイタリア人たち。
わたしがこのイタリアンスタイルに慣れる日は果たして訪れるのだろうか、、
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