アナタなら、どれを選ぶ?【半分ろうそく】
半分ロウソク
「だいたい、1cmが10年に値すると思ってください。」
ロウソク屋は、そう説明した。
地上に降り立つ準備が整った魂たちは、最後に “命のロウソク” を選ぶ。
まだ “人生” というものを経験したことのない魂には、命の「長い・短い」についての価値観が備わっていない。
直感で、平均的な高さのおよそ半分、直径は平均の何倍もあるロウソクを選んだ魂に、店主は言った。
「これは“半分ロウソク”と言うんだ。きっと歴史に名を刻むような功績を残す人生になるだろう」
店主は無数のロウソクが燃える部屋に魂を連れて行くと、選んだロウソクに火をつけてやった。
ぼんやりと揺らぐロウソクの火と同化するように、やがて魂は消えていった。
無事に「命」を手にして地上で産声をあげたのだろう。
それから約30年の時を経て、地上では、ある偉大な若き英雄が息絶えようとしていた。英雄は側近たちを集めて、最期に言った。
「俺の人生は、太く短いものだった。だが、愛する我が国の未来を、もう少し長く見ていたかったなぁ」
無数のロウソクが燃える部屋の片隅で、一つのロウソクの火が、ふっと消えた。
#毎週ショートショートnote
に参加しています。今週のお題【半分】×【ろうそく】で書かせていただきました。
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