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なんちゃらマスクさん、ありがとう 【顔自動販売機】

顔自動販売機

「昔の人は、色んな顔をしていたんだね」

おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんの時代の暮らしのあれこれを展示する博物館で、写真パネルの中の人々の顔をまじまじと見て、私は不気味な気持ちがした。

「皆、よくこんな顔で外歩けたなー」
今では考えられないぺちゃんこな鼻、細い目、薄すぎる唇。

「顔自動販売機がある時代に生まれて良かったー」
いつでもどこでも “盛れ顔” になれるバーチャルフェイスの開発に、当時たくさんお金を出してくれた世界的富豪、なんちゃらマスクさんには感謝感謝だ。

たっぷり展示を楽しんだ私は、おじいちゃんと手を繋いで博物館を後にする。

高齢のおじいちゃんの手は、しわしわだ。ゆるゆるの皮膚をつまんで遊んでいると、「こらっ」と言っておじいちゃんが私に顔を近づけてきた。

おじいちゃんはしわひとつない、外国の美青年の顔をしている。
私は、二次元から飛び出して来たような儚い少女の顔で、クスっと笑った。

「ね、ご当地フェイス、買っていこうよ」
そうしてまた明日から、新しい顔の私達を楽しむ。




#毎週ショートショートnote
に参加しています。今週のお題【顔】×【自動販売機】で書かせていただきました。

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