見出し画像

症例プレゼンテーションの評価とフィードバック

こんにちは、あおきです。心理士としてカウンセリングをしながら、学生に医療コミュニケーションを教えるお仕事をしています。

さて、超久しぶりに、まじめに今日は医学教育の内容です。

症例プレゼンテーション

医学教育では、実際の患者さんに医療面接したり、ロールプレイをして聴き取りした情報をまとめる手法の1つとして、症例プレゼンテーションをおこなうというのがあります。

たとえば、症例検討や模擬面接をして情報収集したり、先輩の陪席をしたり、実際に患者さんの医療面接をした後で、「この患者さんはこういう症状があって、こういう状態なので、こんな病気なのではないか」というのを先輩や指導医にお話をするというものです。

症例プレゼンテーションを行うことで、臨床推論能力を高めるなどのポジティブな効果があるのですが、学生の症例プレゼンテーションをどのような観点から評価するのが良いのか?という点については十分に検討されてきませんでした。

症例プレゼンテーションの評価基準

そこで今日はこちらの論文*をご紹介します。

この論文では症例プレゼンテーションを評価する際に、VSOPモデルというのを提唱しています。

VSOPモデルでは、

V:漠然としたプレゼン 情報収集不足で、情報整理されていないため漠然としている。訓練不足である。
S:構造化されている 情報収集は十分だが、鑑別診断がリストアップされていない。
O:整理されている 鑑別診断はOKだが、その根拠となる陰性所見と陽性所見の提示は不十分である。
P:鑑別診断を念頭に置き、陰性所見と陽性所見の提示が十分である。

の4段階で症例プレゼンテーションを評価します。

段階としては、①情報収集力+整理力、②確定診断に加えて鑑別診断をリストアップ、③確定診断と鑑別診断の根拠をあげられている(陽性所見:この症状がある、陰性所見:この症状がない)を順にクリアしていく必要があります。

症例プレゼンテーション後のフィードバック

プレゼンテーションをさせっぱなしにしちゃあ学生さん伸びないですよね。やりっぱなしにすると本当になんのためにプレゼンテーションしてもらったのかわからないっす。フィードバックしましょう。

先ほどのVSOPに合わせてフィードバックをする際には、

V 発表者の情報収集力と整理力がないので、まずどういうことを聴き取りしたらいいかと何を話したらいいかについて不十分な点を明らかにしましょう。
S 鑑別診断をどのように考えるかについて聴き取りをし、フィードバックしましょう。
O 足りない部分の鑑別診断と陽性所見・陰性所見を取りに行くためにどうできるかをフィードバックしましょう。
P ポジティブなフィードバックをおこないましょう。

Pだけにポジティブフィードバックをするのではなく、ほかの段階においてもできている部分はできているとフィードバックできるといいと思います。

このように、学生の段階に合わせてフィードバックできるのがこのモデルの良いところですね。活用させていただきます。

*Onishi (2016) Assessment of Clinical Reasoning by Listening to Case Presentations: VSOP Method for Better Feedback. J Med Educ Curric Dev
, 21;3:S30035.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?