どんな舟に見えますか? /ファシリテーション一日一話 13
あるNPOの会議進行をお引き受けした時のこと。15年かけて育ててきた組織も、そろそろ転換期。設立者がバリバリに働ける年齢から逆算しても、ここ5-10年で、組織を転換させる必要のあるタイミングに見えました。
みんなで絵を描いて話そう
そこで今回は舟にたとえるワークを取り入れることにしました。「皆さんが参加するこの団体は、舟にたとえると、どんな感じでしょうか?」と問いかけ、全員に絵を描いてもらうのです。すると、15人いた参加者が、それぞれに筆を進めます。なかには、楽しそうなカワイイ舟を描く人もいました。でも、よく見ると、漕いでいるのは少数の人間で、応分の負担ができてない様子も描き込まれていました。また別な人は、舟の歴史を描く人もいました。スタートは川の上流で筏のような小さな船体だったものが、だんだん大きくなり、今、大海原に漕ぎ出でようとしている風でした。でもよく見ると、その舟は改築に増築を重ね、荷物が乱雑に乗っかっていて、バランスが悪そうです。荒い波に向かうには、荷物の整理や船体の整備が必要そうでした。また別の人が描いた絵では、一艘の舟ではなく、事業部ごとにいくつかの小さな舟が船団を構成しているのもありました。お互いの向かうべき大きな方向性は共有しているものの、少しペースが違ったり、互いの様子が分かりにくくて小さなトラブルが起きそうな予感の絵でもありました。
未来図を描いてみる
同じ組織を描いているのに、それぞれに見え方が違う。でも、全部の絵を並べて見てみると、この組織が抱えている課題や、解決すべきポイントは一目瞭然となる。そんな時間でした。僕から「5年後、代表者の年齢を考えると、皆さんの舟はどうあっていたいのでしょうか?」と問いかけ4人組みで、舟のリニューアルプラン(体制提案のようなもの)を描いてもらうことにしました。組織の未来図を描くのは簡単なことではないのですが、ほんの少しその未来像が見えたところで、今回は散会。次回の話し合いで、「この点を具体的に詰めて行きたい」という議題を複数出して終了となりました。
舟の描く、というのは、なかなかに面白い作業です。「私たちにとって、荷物とは何か?」「私たちは何を役割とする舟なのか?」「タイタニックにとっての氷山(組織が気にすべき大きなリスク)にあたるものは、私たちの舟の場合、何か?」といった議論に膨らませてゆくことができそうです。
深刻な課題も、笑って話せる場づくりを
皆さんが、今乗っている舟は、どんな様子でしょうか? 船員さんや船長さんは、自分の役割を認識して、気持ちよく航海できているのでしょうか? それともどこか無理をし続けて、疲弊した船員はいないでしょうか。そんな例えを用いたお絵かき&話し合いのファシリテーションでした。組織の話は、けっこう生々しく、ときにお互いの責任と問い合ってしまったり、ギスギスした雰囲気になることも多いです。いったん舟に例えて絵を描くことで、組織の深刻な課題も、笑って俯瞰できる。そんな場づくりもいいかな、と僕は思います。
2024/4/20朝 特急あずさの車内にて