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【開催レポート】ファシグラ・キャンプ2023春の陣 〜きく・かく・えがく〜 野外で話そう

みなさん、こんにちは。淡路島在住のファシリテーター・青木マーキーです。昨日まで愛媛の板書屋いわし〜と「きく・かく・えがく ファシグラ・キャンプ」を開催していました。

これが超絶面白かったのでレポートします。

雨天のため琴屋のお庭にタープを張って

会場は私たちが管理している古民家・琴屋。大正元年に建てられたこの古民家は淡路島独特の建築様式で建てられています。屋根瓦もりっぱ。通常、古民家リノベーションをする場合はきちんとトイレを新しくして〜、WiFi通して〜と、便利で快適にされることが多いのですが、ここは「電気・ガス・水道は通っていません」というの不便さがポリシー。薪と炭と井戸水や雨水、ローソクやわずかなLEDランタンを灯りに過ごすという空間です。まぁほぼキャンプですね。僕たちがこの空間をお借りして8年目になるのですが、今回のファシグラ・キャンプがいちばんこの空間を使い倒した感覚があります。


準備が8割、当日8割


一緒にファシリテーターとして登場下さったいわしーが1週間前に準備キャンプに来てくれました。ファシリテーション・グラフィックを学ぶ場合、通常は水性マーカーのプロッキーなどを用意するのですが、少し幅を持たせて、水彩、油絵、墨汁、クレヨンといったオモシロ画材も用意してくれました。これがのちに爆発します。


鹿児島の実家から取り寄せた油絵・水彩セットなどを広げるいわしー

どんな仕事でもそうだと思うのですが、やっぱり準備が大事。事前にどこまで準備できているかで当日の動きが異なります。いわしーは、すべての絵の具を出して、筆を洗いいつでも画材が使える状態をつくっていてくれました。またパートナーのおきょうは琴屋の中外を整備してホワイトボードをしつらえたりベニヤ板を置ける場所を設置したりと空間づくりに余念がありません。準備が8割のつもりで、事前に掃除をし空間を整え道具を用意する。これが肝心ですね。

ただ、アウトドアでのファシリテーションは不確定要素が大きくなります。今回は天気が悪く長雨がふったり、強い風が吹いたり、急に気温が下がってきたりしました。参加者のアイデアや思いつきも素晴らしく、いろんな提案が出てきても柔軟に対応できる力が求めら得ます。現場の変化や変更に弱いファシリテーターもいるのですが、それはちょっともったいない。気持ち的には「準備が8割、当日8割」という感じでやるようにしてます。できる準備は何でもしておくけど、当日のワークが始まったらそれらをいったん全て捨てて、いま・ここで起きることに全力で向き合う。想定外の何かを楽しんで、その場でしかできないことをやる。そんな風に過ごすのがちょうどいい感じかな。

そうこうしているうちに参加者が到着です。約束の時間より早く来る人(前泊組)もいれば、予定に遅れて登場する人も。だんだん人が集まってくる感じは好きです。今回、古民家・琴屋を利用するのが初めての人には、水やトイレの話をする必要があります。いわし〜がホストマインドを持って琴屋のご案内をするのを見て、僕はとてもうれしかった。


琴屋の敷地の裏手にある地層を眺める参加者。粘土層をさわって「柔らかい〜」

さぁようやく集まったぞ。天気予報的にはこのあと崩れてくるらしいから、まずは晴れているうちにぐるりと周囲のお散歩を。会議室で行うファシリテーションでは、室内をぐるっと見渡すだけでことたりますが、野外で行う場合は近くにどういう自然があるか、どんな空間が利用可能かをぐるっと見て回るのが吉。今回はある参加者が植物にめちゃくちゃ詳しいことがわかり「おー、あれもいた。これもいた」とホクホクしながらお話ししてくれました。

自己紹介を交替でかく

ファシグラ・キャンプというのは「ファシリテーション・グラフィックについて深めるキャンプ」のこと。会議や話し合いにおいて、参加者の発言を文字や絵をつかって板書し、意見交換に役立てる技術を深めようという場です。冒頭の自己紹介は、古民家の長屋門のもとで大きく貼った模造紙に、交替でかきあうことにしました。Aさんが自己紹介しているときは、となりのBさんがかく。Bさんが自己紹介するときは、そのとなりのCさんがかく、という感じです。お互いの自己紹介を聞きながらも「おー、こんな書き手が集っているのか」といのをちら見できるワークで、僕といわしーのお気に入りでもあります。ふむふむ、今回はこんな人たちが来ているのね、とお互いを少しキャッチしたところで、お腹が空いてきました。


長屋門にベニヤ板をはりつけて簡易の模造紙貼り場をつくる。後のホワイトボードも後ほど活躍

食事をつくる喜び

お昼ご飯はシンプルにお味噌汁と白米。梅干しとシソの実の醤油づけ、という感じ。キャンプでの楽しみは、やはり食事。都会の会議室では、コンビニ食だったり外食だったりして、できあがったものを頂くことが多く「皆で食事をつくる」という時間はなかなか持てません。

キャンプでは「××ちゃん火起こしたのんでいい?」「〇〇と僕でホットサンドつくるわー」「誰か珈琲入れたい人!」「思いついたんだけどこんなサラダつくっていい?」とめいめいが動けるところを動いて一つの食卓ができあがってゆくのは、下手なアイスブレイクや協力ゲームをやるより効果的なことがあります。今回は山伏仲間でもあるひとみちゃんが超絶美味しい豆ご飯を炊いてくれました。これがもう大人気。慈愛に満ちた味でした。

お豆の味は、春の味。みんなお替わりしてました。ひとみちゃんナイス


雨音をかく、この3年をかく、人生をえがく

いわしーは直前の北海道旅行中もいくつものワークを考えてきてくれました。淡路島で古民家でファシグラ・キャンプで、今回の参加者をイメージして、どんなワークをすることが「きく・かく・えがく」ことになるのか?を考えて支度をしてきます。折しも雨が強くなってきました。張り巡らされたタープにも雨が吹き込んでくる事態となったので、いったん古民家のなかに避難した我々の耳に、雨音がきこえてきます。よく耳をすますと雨音以外にもいろいろな音がきこえます。「かく」ができるようになるためには、その手前の「きく」の修練が肝心。いま、聞こえている音をかく、というワークがとても味わい深かった。同じ空間に身を置いている私たちが、それぞれ違う音を感じ取り、異なる表現でかいている。それらをシェアするだけで、ぐんと聴力があがった感覚もあります。

また、この3年はコロナに影響を受けた期間でもありました。ペアになってお互いの3年をききあってかく。このファシグラ・キャンプでは、このあと、何度も「お互いの人生をきいて描こう」という時間が立ち現れてきます。そのベースともなったナイス・ペア・ワークでした。この数年で起きた人生の変化、苦難、苦しみ、発見、出会いなどが、それぞれに描かれてゆきます。かくということは、相手の話をきいて、受け止めて、それを自分なりに表現して当人にお返しすること。そんな神聖な時間があふれていたように、感じます。

最後のワーク、参加者発案で焚き火しながら水彩や墨汁を使ってめいめいがえがく姿が面白い


かき比べもまたおかし

1つのお話しを聞いて、複数人が同時にかく、というワークもかなり面白いものです。おひとりの話を聞いている。話の中身は同じだけど、人によって受け取るところ、かく内容、描く表現方法が、実にさまざま。ある2人が同時に書いたとき「あの人がきっとこうかいているだろうから、僕はちがうほうを書いておこうと思った」みたいなバディを信頼して、それぞれに補完するタイプのかくを見せてくれた2人もいて、その感じは実に面白かった。月と太陽、光と影、同じお話しを聞いても、それぞれに描き方がある。かきくらべをするのは、とても面白いことです。ちょっと勇気がいることだけど、それが一緒にできる関係性がキャンプのなかで生まれてきたのであれば、それは実にありがたいこと。

かきかたは、ひとそれぞれ。書き手の人柄や性格やコンディションや受け取りが表れる

親子参加の可能性

今回、もう一つ可能性を大きく感じたのは「親子参加」という形態です。こういうワークショップをやっていると「子どもとパートナーを家に置いてきて参加しています」という声を聞くことがあります。「夫に子どもを預けて、久しぶりに外出できました!」と喜んでいる風に聞こえることもあれば「妻と子どもに迷惑をかけっぱなしで、、」みたいなニュアンスを感じることも。どちらもとても大事なことと思うのですが、今回、ある参加者から「親子でキャンプに入ってもいいですか?」と相談がありました。中学1年生になる娘さんと夫もいっしょにつれてきたい、と。通常、会議室のなかの講座だと、空間的逃げ場もなく、なんだか違和感があって受け入れにくい時もあるのですが、これが野外キャンプの懐の広さ。いくらでも逃げ場というか、関われる感じがあり「じゃあ、食事は一緒にして、ワーク中は手持ちぶたさになったら、近場で観光してくる、とかでどうでしょう? いっしょに食事づくりをサポートしてくださるとうれしいです」と提案して、ゆるやかに合流する感じになりました。朝、中1の娘さんが他の大人たちに混じって、火起こしをしたり、いっしょにホットサンドをつくっている様子が、なんだかいい感じ。こういう時間を一緒に親子で過ごせるのも、ありだなぁと感じました。そのご家族からは「料理が美味しかった。裏番組で、ずっと料理をつくっているチームがあるのもいいのでは?」というアイデアも頂きました。これは、かなり面白い。表のチームは何かテーマを持ってキャンプをしているが、裏のチームはがんがん美味しい物つくりながら楽しんで待っていて、食事のときに合流する。そんな表裏一体型のキャンプも面白そうだな、と思いました。交替で男飯、女飯、男飯、女飯、みたいなキャンプもできそう。うん、可能性がいくらでもあるな。

以前、パートナーのおきょうから森のイスキアの佐藤初女さんといっしょに食事をつくっては食べるキャンプを3泊4日でしたことがあるという話を聞いたことがあります。そんな時間もきっと豊かだろうな。どなたか料理人と泊まり込みでつくっては食べるキャンプもしたいな。


昨日あったばかりのオジさんとホットサンドをつくる中1女子。彼女にとってどんな体験だったろうか

いわし〜の成長がすさまじい

実はこのファシグラ・キャンプ、半年ほど前に1回目を開催しているのです。僕が今回感じたのは、この半年間、いわしーの成長がハンパないぞ、ってこと。全体への声かけ、ワークの組み立て、柔軟性、指示の出し方、イレギュラーへの対応、自身が楽しむ姿、いずれをとっても、格段にレベルアップしている。若いファシリテーターと一緒にお仕事をさせていただくと、メキメキと音を立てて成長している感じを受け取れて、オジさんファシリテーターとしては、じつによい刺激を頂くのです。今回、僕は要所要所で少し顔を出すだけで、場が成立していったな、と思います。たぶん、次回か次々回ぐらいから、いわしーは一人で、こういう場を持つことができるだろうな、と思います。みなさん、ファシリテーターや板書を頼むなら、ぜひどうぞ。

そして、僕自身も前回のファシグラ・キャンプで学んだかき方をこの半年で試みてきたり、自分のなかの板書の位置づけが今回もぐんと深まったこともあり、お互いにとってよき時間になっているのかな、と感じます。いわしー、ご一緒してくださってありがとう。


コラボすることでお互いが学び育ち広がってゆく。いっしょにやるのは面白いな


やっぱりアウトドアで話すのって、楽しいな。ここまで培ってきたキャンプの経験や、ファシリテーションの主催講座での経験値が、密接にミックスして変容した瞬間でした。また空間づくり・場づくりという視点からも、この古民家・琴屋の可能性がぐぐっと広がった瞬間もいくつもありました。8年間、古民家に手を入れ続けてきて、ようやく立てた境地です。よし、この空間をもっと活かすぞ、っと。


「琴屋が喜んでいるね」と話す妻。その辺にある材木やブロックで作った焚き火空間もお気に入り


次回のファシグラ・キャンプは、秋頃に。焚き火が嬉しい11月18−19日の土日に開催しようかなと思います。関心ある方は日程を空けておいてください。


終盤になってようやくの青空。雨もまたキャンプなり!

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