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人物を旅する /ファシリテーション一日一話 10

旅をするのが好きだ。全国各地に出かけていって会議のファシリテーションをするのが本職なのは、どこへ移動するのも全く苦にならないからだと思う。むしろ好き。仕事の時は一人で移動することが多い。初めて行く土地のことを調べたり、宿をとったり、交通経路を探るのは、もはや喜びでもある。

一人で旅するだけでなく、集団での旅を企画するのも、昔から好きだった。学生のころから、環境問題のスタディツアーなどを企画して、アメリカにいったりフィリピンに行ったりしてきた。テーマを決め、行程を組み、旅の仲間を集って、ワリカンでわいわい旅する。そういう過程で得た学びは、自分の血肉になってゆく。共に旅した仲間たちは、一生の友になっていったりもする。時間も労力もお金もかかるけど、旅して得るものは豊富にある。

昨日まで、義父の山田脩二さんをテーマに、「対話型鑑賞で巡る淡路島」という小さな旅のファシリテーションを担当した。駅で集合し、山田さんの作品が収蔵されている企業ミュージアムや地域拠点を巡り、作品をたっぷり鑑賞しながら、おしゃべりをする。感じたこと、考えたこと、気になったことをワイワイ話ながら、次の作品に向かって移動する。山田脩二さんは兵庫県在住の方なので、彼が手がけた瓦を使った作品は県内島内に豊富にあるから、訪問地に事欠かない。

旅の仲間で、昔から山田さんとつきあいがある年配の御仁がいたので、若かりしころのやんちゃな山田脩二ネタをきかせてもらえた。個性あふれる建築家たちと、たくさんお酒を飲んで、とんでもない所業を繰り広げてきた人物。いっぱいエピソードを聞きながら、作品をじっと見つめる。若いころの作品にはド派手なエネルギーを感じ、年老いたころの作品からは渋めな品性が宿っていたり。

旅の終わりに自邸を訪れた。いろいろな作品を眺め、それらにまつわる対話を重ねてきたうえで、作家当人に出会う。人柄に触れ、家族に触れ、ともに食事を楽しむ時間は、とても豊かで、温かかった。みんないっぱい質問したし、山田脩二さんのスライド・トークで当人の世界観をより深く味わうことができた。

ある人物をテーマに旅をする。その人の生まれ・育ち・学び・仕事・暮らし・生き方などに触れ、自分たちの人生の肥やしとする。そういう旅のファシリテーション、僕は好きなんだな。この原稿を読んでくださっているあなたとも、いずれどこかで共に旅ができるかもしれません。その時はどうぞよろしく。


一つ目の訪問地は新神戸駅近くの竹中大具道具館。達磨窯で焼いた敷瓦が来館者をお迎えする


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