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わたしたちは「よき祖先」になれるか?5月5日「こどものためのどうぶつ会議」開催レポート

よき祖先になれる?


みなさん、こんにちは。淡路島在住のファシリテーター、青木マーキーです。最近「グッド・アンセスター」という本を読んでいます。副題に わたしたちは「よき祖先」になれるか とあります。最近、お仕事で一緒になった松本紹圭さんが翻訳なさった本です。

https://note.com/shoukei/n/n9ddc1808839f


短期思考から長期思考へと誘う一冊

本の帯に「これからの人類にとって、最も重要な問いは何ですか?」とあります。みなさんは、どんな風に考えるでしょう。

台湾のIT大臣のオードリー・タンは「どうしたら、よき祖先になれるか」と答えたそうです。この本は、短期的な利益や短期的な快楽を追い求めがちな私たちに、「長期思考で考えると、それってどうかな?」というボールを投げてくれます。長期的に考えて、それは本当に私たち人類のためになることだろうか? 何世代も先の子孫たちに「よき祖先がいてくれた、ありがとう」と思ってもらえるような働きを存分にして、死んでいきたいな、と僕は思いました。

「どうぶつ会議」をやってみよう

5月5日は端午の節句、こどもの日。もっとも身近な子孫でもある「こどもたち」のために、何かできることはないかな、と思っていたところ、ファシリテーター仲間の泉森奈央さんが、声をかけてくれました。

奈央さんは、ながらく奈良の公民館で働いてきた笑顔がステキな女性。昔、古文の授業で学んだ源氏物語にて「艶なり」という表現を学んだことを、ふと思い出すような雰囲気のお方です。この春、公設公民館の立場を離れ、ご自身で「ファシリテーターのいる私設公民館 wellcome」を立ち上げたとのことです。おめでとうございます!

https://www.facebook.com/WellCome-ファシリテーターのいる私設公民館--103622455539751

春先に奈央さんから5月5日のこどもの日に、こどもたちのための会議を開催したいけど、ファシリテーションをお願いできないか? というご依頼がありました。以前、僕が紹介した「どうぶつ会議」という絵本を読んで、ピンときたようです。うれしいな、こういう風に反応を返してもらえるのって。


70年近く前から売れ続けているロング・セラー

この絵本は、戦争やテロやストライキばかりしている世界をなんとかしようと、ゾウやキリンやシロクマたちが一同に介して「こどもたちのために」会議をひらく、というお話し。

どうぶつたちは、船や氷や飛行機に乗って、世界中からどうぶつ会館にあつまり、こどもたちにために、人類が戦争をやめ、武器や軍隊を捨て、平和に暮らすことを提案します。大人たちが繰り返す無駄な会議や書類づくりにかける時間を減らして、もっとこどものためになることをしよう、問題提起するのです。

1954年に初版が出ているロングセラーで世界中で翻訳されていますが、未だ人類は、当時と同じ過ちを繰り返しているようにも感じます。文を書いたエーリヒ・ケストナーさんや、絵をかいたワルター・トリヤーさんは「よき祖先」だったな、と僕は思うのです。

奈央さんとzoomで打合せをして、「こんな会になるといいね」とイメージをすりあわせたら、さっそく広報を開始。こどもも、親子も、こどものために何かしたいと思う大人も、参加できる会にしたところ、小さな人から、かつてこどもたった大きな人も含めて総勢15名がご参加くださりました。

まずはお絵かきからスタート

5月5日はゴールデン・ウィークまっただ中。朝9:30から60分間の「こどものためのどうぶつ会議」、いよいよスタート。15分前からログインできるよ、と案内したところ、真っ先に登場してくれたのは5歳のAちゃん。「あなた、だれー?」とのっけからエンジン全開です。「マーキーでーす。今日はよろしくねー」と挨拶します。Aちゃんはものおじせず、「紙に何かくの?」と質問してくれました。参加するみなさんに、「手元で何か描いてみせあいっこするから、紙とペンかホワイトボードとマーカーか、用意してね」とお願いしてあったのを覚えていてくれたのです。

僕はあとからアイスブレイクがわりに使う予定だったフリップを出して、さっそく描いてもらうことにしました。「Aちゃんは、どうぶつだったら、何になりたいですか? マーキーは、ペンギンになりたいです。なんでかっていうと、お魚とかイカが好きなんだけど、ペンギンだったら、たくさんお魚食べられるかな、と思って。Aちゃんはどう?」と聞きました。すると、せっせと何か描いてくれています。

そうこうしているうちに、今度はもう少し年上のBちゃんや、Cちゃん親子も登場してくれました。大人単独で参加する人もいます。見たところ画面にはいないけど、どうやらお父さんのかげにちょっぴり隠れたり出てきたりする男の子もいるようです。

オンライン・イベントは、ログインしてからの待ち時間が無言で過ごすことも多いですが、僕はなるべく声をかけたいなと思います。入室する参加者ひとりひとりに「ようこそ」を伝えながら、マイク・チェックをかねて挨拶をします。そして、手持ちぶさたになりそうな人には、さっそく絵を描いてもらうのです。

開始時間になって、メンバーもそろったのでスタートです。主催するwellcomeの奈央さんから、ようこその挨拶が入ります。ロシアとウクライナの戦争が今も続くなか「どうぶつ会議」という本から受けたインパクトや、開催に向けての思い、ファシリテーターの青木マーキーの紹介などを頂いて、バトン・タッチ。

進行役の僕からは、「よくきこう」と「よくはなそう」という2つのグランド・ルールを提案させていただきました。戦争や平和に関する話し合いは、実にいろいろいろな立場や考えがあります。ときにぶつかったり、誰かの声が強すぎて支配的になったり、発言しにくい雰囲気になることもあるでしょう。そんなとき、この2つに立ち返って、いっしょに場をつくってほしいな、と思いました。軽くウォーミングアップをして、さっそく本題に入ります。

どんなことが、こどものためになる?

進行役の僕から出した問いは「提案タイム:どんなことが、こどものためになる?」です。こういうことこそ、こどものためになることだ、と思うことを、何でも描いて出しあおう!ということです。
絵本「どうぶつ会議」では、どうぶつたちは「大砲や戦車をなくし戦争をやめよう/国境をなくそう/役人と書類のかずは、できるだけ少なくしよう」という提案をしました。さて、参加したみなさんは、どんなことがこどものためになると思い、提案するでしょうか?

はい、どなたでもどうぞ。と水を向けると、まっさきにBちゃんが「学校の週の真ん中に休みがほしい」という提案でした(笑)。

月曜から金曜まで勉強づめだと、途中でつかれてくるから水曜日辺りにゆっくりできる日がほしいそうです。教育現場は切迫しているのでしょうか。「おお、面白い。それはもしかしたら、大人の人もそういうの欲しいと思っているかもしれないね。他には、他には?」とどんどん聞いてゆきます。

すると「学校以外にも、こどもがいける場所があるといい」とか「しゅくだいのない日がたまにほしい」といった声もありました。大人たちからは「こどもが好きなときに、好きなだけ遊べるといいな」とか「こどもの話をよくきく。いっしょにお話しをする時間をとる」「大好きだよ、と伝える」という提案もありました。怖い顔で会議するのはよくないので「会議の前に、あっぷっぷでもして、笑顔で話し合えるといいのでは」という提案もあり、皆で実際にあっぷっぷー!とやったりもしました。

出た意見はつぎつぎと奈央さんが書き残してくれます。さすがファシリテーターのいる公民館

ウクライナで起きている戦争に関しては「せんそうをしない」「せんそうをやめて各国が仲よくしよう」という提案が出て拍手が湧きました。加えてその発言をしたお母さんからは「大人たちは何もしてくれなかった、と言われないような大人に、私たちがならないと」という声や、こどもに対して「大丈夫だよ」ときちんと言える大人になりたい、という提案もいただきました。

参加する全員から、何かしらの提案をいただいたのち、グループで話し合う時間をとりました。「今、出してもらった提案は、どれも大切なものばかりです。グループに分かれて、それらが<どうやったら、できるかな?>という視点で話し合ってみてください」と言ってから話し合いました。お互いの提案を認めあい、それらの実現に向けて話す時間です。

そのなかで、ある小学生と意見交換していると「こうやって、こどもが社会に対して意見が言える場が少ない」ということに気がつきました。「こういう風に、戦争や平和など、世の中の大事なことについて話せる<こども国会>みたいな場所があって、日本中のこどもの意見を聞いたり、アンケートをとれるしくみがあっても面白いかも、なんて話題にもなりました。

うん、こども国会か。面白そうだな。誰かいっしょにやらないかな。今ならオンラインでも工夫してできそうな子が増えてきたと思うし、やればたくさんのよいアイデアがでて、きっと大人の国会が参考にしたい意見も多いと思う。

後日談

当日の板書をもとに奈央さんが、整理してくれたリストがこちら。こんなことが、こどもたちのためになるんじゃない?15の提案です。うーん、どれも面白い!&実現したいと思うものばかり。こうやって、話し合ったことをきちんと記録に残し、発信できるようにするって、大事なことですね。

提案は15にまとめられた

会の最後には、今回の開催がチャリティ・イベントであること。寄付先として3つのオススメ団体があることを紹介されました。この記事を読んで、もしも協力してもいいよ、という方がいらしたら、ご寄付をお願いいたします。


●寄付先1.認定NPO法人 日本チェルノブイリ連帯基金 ウクライナ支援基金

●寄付先2.ユニセフ

●寄付先3.認定NPO法人フローレンス

そして、今回は、こどもの日のチャリティ・イベントとして僕自身も現金での謝金を受け取っていません。その代わりに、奈央さんからはワクワク奈良セット(美味しい日本酒&奈良のお菓子やクラフトコーラや匠のハブラシが入った宝箱)と、奈央さんの息子で若き絵師のtakeruさんからステキな会議イラストをプレゼントして頂きしました。気に入っているので、しばらくZoomのバーチャル背景で使わせてもらう予定。いやぁこういう未来世代からのエールもうれしいな。

こどもたちの声をうけ、僕も一人の大人として、ますますがんばろうと思えた特別な「こどもの日」でした 主催してくださった奈央さん、そしてご参加いただいた皆さん、どうも、ありがとうございました。

takeru画伯からのプレゼントによろこぶオジサンの図


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