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AKITA ! 1

1月だっけ?STスポットの萩谷さんから以前STスポットで一緒に働いていて現在は秋田市文化創造館にいる島さん(当時は俳優を名乗っていて今は劇作家を名乗っている)から繋いで欲しいとの連絡を受け、メールでのやりとりを重ね秋田へリサーチで飛ぶことになった。
3月上旬は京都にいて、下旬にも行くので間を挟む形で秋田、三日間だけ滞在した。

3月7日早朝。飛行機に乗るのは久しぶり?
羽田から秋田空港に到着し、島さんと藤本さんが車でお迎えに来てくれて1日目は車で連れ回してもらった。
まず飛び込んでくるのは巨大な風力発電の数。ずっと沿道にそぎ落とされたデザインの風力発電のプロペラがウルトラマンのように巨大に回転を続けていて連続的に連なる。道をまっすぐ車が進みながら動かしていることのスケールが大きく、バグる。
通り過ぎていく日本海側の港湾には漁業というより運搬などを目的とした場所としてそこは機能しているらしく、おそらく風力発電のパーツとも思える巨大な棒状のものが寝かせられていたりして、その横たわっている感じとさっきの建っていた景観を行き来しているとなんだか色も相まって巨大な仏像のことをぼんやり考えていた。

まず向かったのは男鹿市のなまはげ館、なまはげの資料展示や実演に立ち会う。
入り口には象徴的な球体型のオブジェクトが林の中に宇宙から落ちてきたように存在し、キャプションがかなり方向性を指し示す。たくさんのなまはげのお面や、クリエイターの技術が集結し作られたであろう20年ほど前の映像上映、また館内放送に足される形でその場にいる資料館スタッフの人が援護射撃的に口頭で館内に向かって情報を加えていく。
資料館隣の囲炉裏のある古民家をそのまま残したような場所でなまはげの実演は行われた。家に招く側のご老人と家に入っていく側のなまはげとどちらも年季の入った威厳さえ感じる演技だったり、観客との関係が曖昧に関係し合う演出が東京で体験する傾向の演劇に比べて新鮮味があった。
先に見た映像の作りと言い、働いているスタッフのはきはきとした感じと言い、館内のこぎれいな感じと言い、総動員で楽しませてもらった。

近くの真山神社へ登っていく。
資料館にもあった木で出来た船が飾ってあり少し触ってみるとやはり重さがあって、階段をのぼりながら最近しているトレーニングの話などをする。した気がする。
それは普段、パフォーミングアーツなどを生業にしていると平坦な床で踊ることが多いが、凸凹で足が踏み込んだい際に滑り込みもするよう土などの上で踊ることでむしろ肉体が立体的に形作られていくのではないかという話など。

そこから北浦入道崎へ。
日本海側の強い波が岩場に強く打ち付ける。強い風もまた吹いて荷物を飛ばそうとする。
海は崖から少し見下ろすような形になっており、映画セットのような形状がその崖の下から海に際して魅力的に敷かれている。ダイナミックの景観で危うささえある。こういうのを見る時の身体へのドキッとする感じは明らかにあって、例えばここで勝手に秋田ということもあり土方巽的な存在を想像してしまう。(これから行く先々でこの景観や土地の形状から身体への投げかけみたいなことの想像がいくつか積み重なっていった。)

藤本さん曰く秋田で最もおいしいと感じたお店が近くにあったがこの日は閉まっていた。駐車場に面したお店で海鮮ラーメンを食べて車で移動。

鬼が積んだ999段と言われる赤神神社の階段を登っていく。
5社が林の中に一段高くなった傾斜の上にそびえ建ってて、マインクラフトのように並んでいると藤本さんが言った。かなり社としては、装飾なども限りなくどれもフラットで色も剥げていてそっけない木肌の色をしている印象がある。ただ、先ほどの入道崎の印象にも似てすっきりはしているのだけど、威厳や空白を感じることが出来、何か身体の緊張が試されるような感じがする。
やっとの思いで昇った階段を今度は降りていくのに注意が必要で、気をつけて降りていく。
駐車場のあるふもとまで降りて改めて山や近辺に関する地図が描き込まれたその絵の中で、楽しそうな地形とそこで過ごす主に修験者たちの行き来が頭の中で想像されて、かつてこの手前にある池の周りに食堂のようなものがあったのかとかとも思う。

この後も埋立地としてでき、畑が広く人工的に広がる村の紹介や、近辺を一望出来る寒風山の方まで車で送ってもらった。まだ冬明けということもあり、文字通り寒い風が吹いて周辺施設は閉まっていた。


二日目は秋田市文化創造館や隣の商業ホールを案内してもらう。
この日、朝、ベーカリー&カフェGRISSINIで朝食をとり建物を出ると向こうからメガネをかけた初老の男性が軽やかなステップを街中で踏んでいるのを見かけた。思わず僕も踊る人間ではあるので、いいですね、と声をかけてみる。少しだけ動揺したように感じられたけどその後もほんの少しだけステップをしていった様子。幸先がいい。野暮にもいつか何かここで一緒に出来ないかとか想像してしまう。

午前中、わいないきょうこさんのプログラム「雪室開封の儀」がやっていて、昨年冬に千秋公園に冬眠保存していた食材を開封するというのに参加する。
公園から列になって創造館まで歩いて運ぶのに参加し少しだけここでのイベントにどのように人が集うのかを見させてもらいつつ、自分でも野菜運びを楽しむ。
千秋公園は都市の公園100(その存在を知らなかった)にも選ばれているそう。地形の起伏が楽しいし、庭の手入れや起伏からの景観、公園内に立つ銅像や家があり面白い。わいないさんのイベントのようにこの公園を有効活用するのはとても豊かだと感じた。少しだけ野菜をその後食べさせてもらった。

昼休みを挟んで僕は島さんと近くの親子丼のお店で話す。確かぱフォーミングアーツのことだったと思う。観客についてだったけ?かな。
戻ってからもらった自由時間で色々試していく、創造館の庭ではわいないさん達がBBQのようにしてさっきの食材を火で熱している。
外の入り口近くの開けたスペースで踊ってみる。あんまりまだうまく馴染まなかったので、今度は室内の大きいスタジオの方へ移動。
非常に大きくて広く天井が高い。広さはあるのに何も置いていない空白の空間がたくさん満ちている。そこでひとたび体を動かすことでこの小さな動きをどのようにこの大きな空間に役割を持たせれるかと試行錯誤を一投足問われるように繰り返し積み上げるのが無限に楽しい。
きっとこれは他のダンサーの方も思うのでは。たとえばここでリレー的にその空白の空間へのトライアルを重ねるのもシンプルに面白そう。
夜は創造館の方達数人と晩酌を交わす。ぞれぞれが持っているバックグランウドが違い、それぞれのやってきたことやこれからの展望について伺う。自分の中にあるアイディアを試しに投げかけてみたりして話してとても楽しい夜を過ごした。少しだけ夜の街を散歩する。
たとえば東京にいる時にスーツを着た"サラリーマン"の人を見る感じのキャラとして浮いた感じに比べ、こっちで"サラリーマン"の人を見る感じ、あるいは出てくるビルを見て受ける感じというのが違う。人口の差か。そんなに離れている感じがここ秋田とかでの方がしないのだ。

今回はサポートを頼りにした3日間のリサーチという過ごし方の感じがあるけど、こうして1人で探っていく時間を増やしていこうと思う。そこから出てくることと、創造館と一緒に出てくるもの、いくつかの別の根拠を持たせていこう。


あっという間の三日目。以外に街でゆっくりできていなかったので秋田県立美術館で藤田嗣治の巨大絵画を見たり、彼の一連の作品を見たりする。
秋田の行事を一枚の巨大絵画に描いたものやパトロンの人が制作のために用意したアトリエの模型など、何か別のインスピレーションがある。ある意味でよそ者である藤田と著名なアーティストであるということ、1人の制作物が美術館になること、そして文化創造館の大スタジオの空白部分にはかつてその巨大絵画が飾ってあったこと。

その日の夕方に少しだけ創造館に戻り藤本さん、島さんとミーティング。今後の方針を決めきらず、とりあえずアイディアを投げ合う。
帰りの飛行機まで時間があったので1Fのスペースで行われているトークプログラムを少し覗いていく。
トークの中でゲストの小松理虔さんが出した街歩きというトピックから、街歩きワークショップを思いつきそれをアーティスト活動として地道に続けることを思いつく人と、一方でその街歩きの経験からたとえばその見知った道の上にお店を出すなどのビジネスを始めようとする人。アートとビジネスなどに分かれる前段階で、同じ根っこを持っていたという可能性について話していて面白いと思った。
その話から、トークの主催者の1人が自分はずっとビジネス畑でやってきた人間として創造館の人にこの場所は果たして"どっち寄り"として運営を目指すのか、というような質問をしていたのが鋭いと感じよかった。
この質問やトークイベントを通して、現在様々な分野の人がこの創造館に集まるということ。働く人の間で、パフォーミングアーツ、コミュニティ、コンテンポラリーアートなどだけでなく、まちづくりという観点などからも様々な参加が起きている可能性を想像した。
またこの質問によって先ほどの打ち合わせで自分が提出したプランを改めて再考したいという気が起きた。どのようにしたら多くの人や、面白い熱量みたいなものをこの場所、取り組みに対して動員出来るのか。
街の人資源も有限で、しかし人は移動することがある程度可能で、過去にもどこかへ行ったり、あるいはこれからどこかを想像したりしながら、外からまたさらにやってくる人、この場をあたためる人、あるいは変わらないメンバーの中で微妙な変化を1日の朝から夜にかけての太陽の季節の変化のように感じられることがある、そういうことを考えた。

いったんの三日間の滞在を終えた。

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