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"パフォーマンスユニバーシティライフ"in CSLAB

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きっかけ
5月下旬、CSLAB管理人でアーティストのうらあやかさんから連絡がありCSLABに来てほしい、打ち合わせをしようということで同じくスタッフの池上さんと3人で話したのは、東京造形大学の学生運営スペースCSLABでは現在、様々なグループが生まれているが中々交わらない状態である、というようなことへの相談みたいな感じで話をもらった。
この状況をなんとかパフォーマンスのようなものでもって巻き込んでいくような景色を作ってくれないか、と。
持ち帰って、自身の制作に寄せて自身のモチベーションを担保しつつ、それらをどこか気にするようなアイディアを考えてみた。
なかなか難しいオーダーでもあり不安だった。最近は不安なプロジェクトが続いている。難しいシチュエーションでの体のアクションを伴ったアイディアを必要とされている。

まずアイディアとして呼ばれた2日間を"止まらないタイムスケジュールで組まれていること"、その中に少し凸凹があってずっと何か起き続けるようなことをと考えた。
"パフォーマンスユニバーシティライフ"というタイトルを思いついた。
これはパフォーマンスを動詞として捉えて、あとに続く大学と生活(時間)に修飾していて、ここで行われるパフォーマンスが大学と生活を動かしていく。あるいはパフォーマンスは誰もが学校で普段していることにも置き換えられる、そういうイメージでつけた。

昼休み
初日、11時半に行って少し打ち合わせをするなり学生がご飯を食べる場所としても使うCSLAB内での昼休みにいきなりパフォーマンスをするということで、さりげなく入っていくことを考えていた。すでにそこでスピーカー内蔵型ギターをひいてる人、タブラーを叩いてる人に加わるようにその場にあった太鼓を叩き出す。空間に音が小さく確かに響き渡っていく。(要所、要所で学生や人に挨拶もする。これは初めての挨拶でもあり、パフォーマンスの側面もあるはずだ)するとまた1人と演奏者がふらりやってきて増え始める。他には友達とだべっているいくつかのグループ、3、4限を担当する教授の沖さんやそこで使うエレキギターを拵えた人もやってくる。その授業待ちの生徒やら。違うテンションの人たち、それでも一緒に同じ場に共存出来ていると感じる。演奏が段々パフォーマティブに外に物理的に迫り出していく。ダンスをそこに加える。なんとなく周りの人が巻き込まれ、それぞれ顔の視線や体が起きていることに接続していく。授業開始の10分前くらいに演奏が終了し、3、4限がそこでそのまま始まる。悪くないグルーヴ感。

3限(沖ゼミの即興演奏の授業の横で)
昼休みが終わって今度はこの場所がそのまま3限の授業に使われる。授業を受ける生徒ととっていないけど潜りで受ける人、あるいはただCSLABにいる人。
この時間に取り組んでみるのは沖啓介さんの即興ゼミの横で"グラフィックレコーダンス"というアイディア。グラフィックレコーディングをベースに逸脱の可能性も含め授業で交わされるやりとりをグラフィックに起こしたり、そこからインスピレーションで踊ったり、あるいはさらに発展させた絵や工作も行うというもの。
うらさんのアイディアでブルーシートを端っこに敷いて描いていく。周りの子に話しかけ、絵を描き出す子がいたり、それを高いところから見る人たち。授業で演奏に取り組む生徒たち。少しずつ了解が広がっていく。
即興音楽が起きていく空間で移動した場所によって聞こえ方が変わることがあると思い、グラフィックレコーダンス側の生徒やなんとなく全体を見ている授業も受講していない生徒を誘って、体のワークを体験してもらう。
即興の振付を共有し数人の学生とやり始めていく。すると音楽をする側もダンスを頼りにし、演奏に具体性が増していく。
ジャンプしたり倒れたり段々と自由になっていく。絵やダンスだけでなくスズランテープを楽器の延長としてくくりつけて空間を結び付けて立体的になっていく。(川上元哉くん)
一方演奏者には玄やネックさえ失ったエレキギターのボディを打楽器として用いる人や、声で参加する人もいた。
半ばふざけつつ、半ば授業パフォーマンスは明らかによくなっていく。
いい感じで授業を終えた。
色んな人のポテンシャルが混じり合って素晴らしい空間になっていた。
既に横で行われている授業の横でそれをインスピレーションに別の授業なりパフォーマンスを展開させること。この場合、音楽の授業であったものがダンスやパフォーマンスの授業にもなっていたということ。
演奏者が他の演奏者や指揮者を頼りにするだけでなく、目の前のダンサーたちが音楽を頼りに踊ることでさらにそのリアクションを演奏に取り込むような双方向的な循環が生まれて行った。これは他でも試したい!

4限(止まらない散歩と校庭でのダンスワーク)
15時になったので今度は"止まらない散歩"。10人ほど集まった人たちと道を決めずに学内の散歩を始める。大学ではすでに人々が生活しそれぞれの取り組みを行っているのでその横を散歩している人たちが通るだけでコミュニケーションが微細ながら起こる。視線だけでも十分。(最近はこの微細なコミュニケーションの可能性について考えたりしてる)そう思ってまず彫刻棟を行き、その先の崖のある森林の方まで足を伸ばす。「こんなところあったんだぁ。」という声がメンバーから聞こえる。また折り返し、別の小道へ。ここでは落ちている瓦礫などを拾って1人1手何かを加えて景色を変えていくワークショップ。終えてまた歩き出す。歩きながらも話が起きる。校庭にいきダンスのワークを始めるともなく始める。(全然立ち止まっていますね!)
校庭の中へ集団で入っていくなりいきなり子供のごとく駆け出す!するとついてきた数人もあとに続き、急なダンスのようなことがその場に起きる!持ってきたものの空中高くに放り投げる。それを見上げる。
そのつもりはなかったものの半ば、この広さを使ったダンスのワークショップへ移行していく。
トリシャブラウンの方法を用いたり、一直線に歩いたり、学生からのその都度提案ももらいながら。大きな声をあげたり。グラウンドの広さはたとえそこでスポーツをやらなくても必要だと強く感じた。

17時アーティストトークと明日に向けてのMTG
再びCSLABヘ戻り、少し休憩をして17時過ぎにモニターを用意しアーティストトークを行った。
時間もなかったので自身のダンストレイラーを見せ、音楽とダンスについてのパフォーマンスした時の動画、借景について話、どうぶつえんなどの移動型のアイディアをプレゼンした。少ない時間だったにもかかわらず興味を持って聞いてくれる人、司会を受け持ってくれたスダタカヤくん。トークの中で、明日はどうぶつえんをやろうということに落ち着いた。
最後は先ほどの授業で使ったブルーシートの上に集まり、明日に向けてのミーティング。参加してくれた数人が今日の感想をぽろぽろと言ってくれていた。踊りたいが中々それが難しいという話など、明日用意しているテーマにも繋がる話。

この日、1日様々なワークをタイムスケジュールを通して行ったところ集合離散を繰り返して学生がかいつまんで参加してくれたのが面白かった。大学という生態系?リズムを感じた。


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準備
2日目。昨日と同じく11:30に到着打ち合わせをして今度はダンスによく使う9mロールのリノリウムを床にしいてモニターを昨日と同じように用意する。
12:20昼休みが始まり、リノリウムの上でダンスの準備体操をし始める。学生が昼ごはんを食べに集まってくる。
12:35くらいから"どうぶつえん"についてのプレゼンを始める、がやがやする中で丁寧にマイクで挨拶。みんなそれぞれの会話に夢中そうで実は体をこっちに向けてる人なんかもいて聞いてくれてる感じがする。そう、大学とはこういう感じだった気がする。聞いていないようで聞いている人がいる。
隣でラジオの収録が始まったのでいったん音を切って、ダンスの映像を無音でモニターにうつす。そしてなんとなくリノリウムの上でダンスのワークショップを始める。
足の裏を使ってよく歩くワークとちょっとした体操、そして最後に向こう側から1人づつ歩いてくるワーク。
数人の近くにいる人に声をかけ、参加者を募る。7人くらいでそれをやっていく。やったあとに感想をもらう。このフィードバックが自分にとってはもっとワークを充実させていくために必要。
それが終わって少し休憩を挟んでいよいよ”どうぶつえん"を始める。


大学で"どうぶつえん"
CSLABに集合してもらい10人ほど集まったので外に出る。早速、僕は彫刻棟の近くで、その石を削る音が聞こえる場所を出発点にその音を頼りに踊り、身振りを起こしていく。
アスファルトがちょうど太陽に照らされて熱く、地面に手を伸ばすとあったかく気持ちがいい。原っぱの広がっている方へ駆け出していく。(借景になれ、と思いつつ)あぁーと声の反響のバリエーションを試していく。
建物と自身の声の反響、体の向きを振りつつまたさらに音の移動と身体の移動を感じる。 
みんなの元へ戻り、こんな感じで移動するのや留まってやるのもo.kということを伝える。

今度はうらあやかさんのワークへ。
2人1組みになり互いのふるまいをトレースし、自分を使って相手になることで半分、半分のもう1人が現れるんじゃないかというワーク。
取り組むペアーによってまったく違うアウトプットとして出てくる。
ワークの狙いはペアによっても色んな読まれ方がされていた。結果的に身体や動きとしてはとてもそれぞれに変な質感が出ていてパフォーマンスとしての情報量が多かったのは面白かった。根拠が見えないものもたくさん出ていた。

スダタカヤくんのワークは橋の上に行き、そこから各々耳をすまして最もいい音をその場で選り分けて選んだその音のもとへ歩いて向かってそれを前にその場でじっくり聞くというワーク。音を採集してばらばらのタイミングで戻ってくる。この集まった橋の手すりもアルミ?で出来ているのか叩くといい音が鳴る、耳をつけていると反響が楽しい。
それぞれ選んだ音の話、その正体の話をしていく、体を伴った音のワークでありつつこの言葉の描写がそれぞれに出て面白いと思った。

レスリングを以前していた彫刻1年生のワークへ。
彼は1人づつ何かしらの無機質な物質を集め、2人1組みになり2つの違う物質を合わせるとどんな音が鳴るか、を体を使いつつ自分の声でそれを描写するというアイディア。(ここまででそれぞれ互いのワークが影響し合ってアイディアが生まれている感じがする。)
輪ゴムやかわいいキャラクターのぱふぱふした置物、プラスチックで出来た椅子、石など様々なものをそれぞれが選び話をしながら聞こえそうな音を声で描写していく。声で描写するのは普段、扱う方法とはかけ離れていることもあり難しさを感じる。が具体的な物質同士なのに音が当たった時に聞こえなさそうだととたんにそれを声で表出するのも難しくとても抽象度が高くなっていく。具体的な物を手に持ってそれを物理的にぶつけようとするにも関わらず、途方のなさのギャップが面白かった。
川上元哉くんのワークへ。
川上くんのはここにいる8人を2グループ見る方と立つ方に分けて5分かけて立ってる方のチームは決めた体の一箇所を一つだけ動かしていく、見る方はそれを観察するというもの。まず最初のチームから原っぱにばらけて開始。
マスクも相まって人がどれくらい動いたのか、また体のどこを選択したかさえ見つけられらないこともあった。あまりにもスピードがゆっくりだったり、気まぐれだったのか、ということでも検討をつけがたかった。
ただ動くハードルとしては低く、みんなが体のことに自然に取り組んでいるようにも見えた。

大学でのどうぶつえんは例に漏れず結構耐久戦というか日差しも相まってタフな時間になった。全体のバランスとしては何かを1人で見せるというよりもワークショップ的なアイディアが選択されていった。

音楽を作る
休憩を挟んで17時少し前の時間になったので、CSLABに再び戻り"音楽"を作る時間へ。
まず大きな紙を持ってきて、作る音楽に持ち込みたい要素を書き出していく。ポップ、ロック、ソロ、サビ、ジャズとか、、、
サビはあるべきで、じゃあ歌詞をどうしようと一言ずつ募っていく。
参加者の1人AutoBoyは気合が入っていて1人だけエレキギターを配備していた。他の人たちはたとえば楽器や、その辺に転がっているものでもなんでもとりあえずもってもらう。
このワークではたとえばいわゆるメロディーやらリズムやらを造形しなくともそこにたとえばミュージシャンが歩いて入ってくる時の足音さえも音楽として意識的に舞台にあげることも作曲の中に取り組むようなことを話した。
そうだ、これは以前、東京塩麹や額田くんとの制作の中で発見し共有していたワークたちだった。コロナになってから音楽のそういう面の引き出しをそんなに引っ張って出せていない感じがあったので少し思い出すような感じもあった。
みんなにサビのフレーズも出してもらい、なんとか10分以内の曲を作り、演奏を行った。やはり歌える人にとっては歌を歌う時間は少し楽しそうだ。声を伸ばしたりして気持ちものびのびしていくというか。


自意識と学生生活
最後はトーク"自意識と学生生活"ということで話し始める。学生生活において他人の目、そこから生じる自意識というのは切っても切れない関係にあり、そのことに苦しみながらも自分を成長させたりその関係性の中でこそ作られるものがあった経験から、他の人にもそれについて聞いてみたいということで話を学生を中心に聞き出していった。ここに集まった人はみんな学校を楽しんでいるということが聞けた。けど、さらにどうすれば学校を発展させることが出来るか、というところまで話を持っていきたかった。
この日は本当に体をずっと外に連れ出していたのでみんな相当に疲れているようだった、最後は結構馴染みの顔でのトークになったようだった。(途中、外部からアーティストの宮川知宙くんがきてくれた。)

2日間、実験の場をくれた管理人のうらあやかさん、イカゲミさん、CSLABの学生たちありがとうございました。今回の2日間はみなさんの協力の上でなんとかマンパワーで成立しました。アイディアを持っていったのが僕でしたが、他の人だったらどうなるだろうとか、このアイディアをまた別の人が2日間間借りして取り組むということは可能なのか、とかも想像しました。
お世話になりました。またどこかで何かを作りましょう。

おわりに
2日間をCSLABで過ごして反省はあるものの、うまくいったところはうまくいったように思う。勢いでやった部分とプランとして持ってきた部分、また当日学生や大学にいる人たちとライブで変化していった部分。
美術大学への期待は大きい。ここは"作る"ことを学ぶ機関。学生が専門分野を学ぶだけでなく、世の中が"作る"時に頼りにあてにできるような場所であってほしい。
昔から続く専門分野を学ぶ機関であると同時に、広く作ることを考えれるとこれからの未来に対して面白く対応していけるのではと思ったり。つまり学校の体勢やカリキュラムが現状では不十分なのではと思ってるということでもある。
学生自体のポテンシャルは引き出せば高いように思う。引き出せば高いということは、もうすでに何かしたくてうずうずしている、ということかもしれない。大人に比べたら、それは非常にチャンスな状況とも言えるのでは。大人だっていつになっても始めれるとは思っているのだけど。 (信じたい)
ダンスやパフォーマンスを考えることはいわゆる舞台の上には絶対に留まらない。いかに舞台のものを面白くしようかと、外部や生活の中で起きる微細な動きを舞台に連れてきたように今度は舞台やギャラリー、美術館などで確認された技術を外に開放し共有していくことで改めて街や景観、ふるまい、営みを作り変えていくことが可能なのではないか。
徹底的に1人で追求し作ることはずっと大切なことでありつつ、全員が参加することの出来る"つくる"の部分を期待し、それはどのようにもっと気軽に行われて、また先を無限に想像出来るがゆえにどこまでも手を動かし取り組むことが出来る、その術をなるべく考えてみたい。



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