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AO・推薦入試における“運”の効用とは?【偶然の扱い方】

こんにちは。日本アクティブラーニング協会理事の青木唯有(あおき ゆう)です。AO・推薦入試オンラインサロンのナビゲーターも務めています。

これまで長くAO・推薦指導に携わってきた私自身の経験から、AO・推薦に象徴される大学受験の大きな変化から見えてくる様々なことを、本ブログにて定期的にお伝えしています。
このような情報や視点を、特に保護者の方に認識いただくことで、大学受験を通じて形成される親と子の自立した関係「親子軸」を育むヒントにしていただければ幸いです。
※2021年度入試からAO・推薦入試は「総合型選抜・学校推薦型選抜」となりますが、本ブログでは便宜的に旧名称で記載しています。

AO・推薦入試は、まるで「賭け」
当たり外れの大きいギャンブルのようなもの

今でこそこうした偏見はかなり減っていると思いますが、一昔前はそんな風に言われることも少なくありませんでした。

定量的な線引きが難しい試験であることから、「賭け」と思ってしまう気持ちも分からなくありません。

また、これは不思議に思われるかもしれませんが、確かにAO・推薦入試で合格する人は、なんとなく「運」というか「ツキ」のようなものを持っている感じがするのです。

「リサーチを進めようと本屋に行ったら、自分が志望する大学・学部の教授が書いた書籍で調べたい内容にピッタリのものがあった!」
とか、
「大学入学後は●●教授の研究室に入りたいと希望していたが、面接試験の担当者がまさに同じ教授だった!」
などという声を、本当によく耳にします。

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そして、こうした偶発的な現象がまさに彼らの合格の決め手になったりするから驚きです。

実は私は、AO・推薦入試の合格を引き寄せるような「偶然を上手に活用する力」は、立派な実力だと考えています。
こうした主張をすると、偶然に頼るような姿勢で本当に大丈夫なの?と訝しがられそうですが、そういうことではありません。

スタンフォード大学の著名な心理学者が提唱した「プランド・ハプンスタンス・セオリー」についてご存知でしょうか?
この理論によると、実際に大きな成功を治めた人たちのキャリアを分析したところ、彼らのキャリアを形成したきっかけとなっていたのは、予め緻密にプランした人生設計によるものよりも、偶然がもたらした出来事による要素の方で圧倒的に占められていた、というのです。

逆を言えば、他愛のない事象のように見える出来事を過小評価したり受け流したりすることなく、そうした偶然性がもつ役割について積極的に意味づけしていける人の方が、緻密な計画や段取りに沿って生きている人よりも成功しやすい、ということです。

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つまり、一見すると偶発的でちょっとした想定外の中で起きたことを常日頃から自分の中にいかに取り込み続けていけるかで、先の事例にあったような「出来過ぎでしょう?」と驚かれるようなラッキーを引き寄せるのです。

もちろん、あらかじめ計画を立てずに唯々諾々と過ごすということを推奨したいのではありません。

AO・推薦入試のプロセスでは、取材をしたりフィールドワークを行ったりする際、一連のアクションを進めるにあたり、最初に目的を設定し計画を作成することはあると思います。

ですが、物事は自分が予想した通りに進まないことがほとんどです。
そのような状況こそが、実は自分の人生にとって大きなチャンスになることを認識して柔軟に行動を変えていけば、まさに強運を手繰り寄せることができるのではないでしょうか?

もっと言うと、実は自分が起こすアクションの積み重ねは、「偶発性を起こす為である」と捉えることもできます。

では、行動を起こすとき、「偶然を起こしやすくする自身のあり方」とはどのようなものでしょう?

私は、それは以下のような3つの概念で表されると思います。

「直観」・「衝動」・「自在さ」

何かしらの目的を叶えるために行動を起こす際、例えば「PDCAサイクル」で謳われているような、
「計画を立てた上実行し、その結果を評価し改善する」
という流れが一般的かと思います。とても理に適ったメソッドです。

それに比べると先の3つのキーワードは、あまりにも真逆ですよね。

ただ私は、PDCAは「外的な環境の変化が発生しやすい状況」においては、実は非常に脆い方法論だと思うのです。

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PDCAに沿った場合、“こうしたい!”と着想してもすぐに行動に移すわけではなく、まずは計画を立てなくてはなりません。その上で実行し、さらにそれに対して評価・改善しながら進める必要があります。
つまり、アイデアが生まれてから形にするまでの間、タイムラグの発生が不可避なのです。

社会の環境がある程度安定していれば、こうしたプロセスが効力を発揮するのかもしれませんが、今のような変化のサイクルが短い時代では、「計画が出来上がった時には既に状況が一変していて全く通用しなかった・・・」ということになりかねません。

また、PDCAによって実行した結果への評価は、過去のアクションや方策の結果と比較し分析していきます。分析対象は常に過去であるため、既存の枠組みによる思考に依存することになり、全く違った次元による新しいアイデアが出にくくなるのではないでしょうか。
今は、IT企業が自動車を開発するなど、異業種の参入による新しい試みが功を奏すような時代でもあります。
PDCAのような考え方だけでは、前例踏襲が固定化するような状況を自らで生んでしまい、かえって機会損失を招いてしまう恐れがあります。

逆に言えば、時事刻々と流れが変化する状況においては、「直観」や「衝動」による即時のアクションと、過去の実績に囚われない「自在さ」を持ち合わせて行動していった方が、結果的には成功確率が高まるのではないかと思うのです。

そして、「直観」「衝動」「自在さ」を持ち合わせている一番わかりやすい存在は、実は「幼児期の子ども」です。

実際に、AO・推薦入試で合格したある生徒がこんなことを言っていました。

「この入試を経験して、自分が5歳のときの感覚を思い出した。」

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感じたことをそのまま表現し、面白いと思ったら直ぐにやってみて、誰にも囚われずにエネルギーの赴くままに存在した、あの童心の時のような感覚の重要性に気がついた、と言うのです。

もちろん、そうした無垢な時代を共有している唯一の存在は、まさに保護者の方です。

そんな視点も心に留めていただきながら、お子さんの本来持っている可能性に光を当てるヒントにしていただければ幸いです。

次は「AO・推薦入試に本当に“職業観”は必要か?」です。
お楽しみに。

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