見出し画像

AO・推薦入試“合格者”と“不合格者”のそれぞれの行く末 :後編【不思議な共通点】

前編【逆転する男女格差】
中編【競争とは異なる原理】

AO・推薦入試の合格者の比率が女性に偏っていることは、大学が公表している毎年の入試結果データを見れば明らかです。

こうした現象は、組織内競争にモチベーションを感じやすい「男性的な傾向」とは異なる、社会の中で独立することを実は好んでいる「女性的な傾向」と重なるのではないかと、中編記事にて考察しました。

もちろん性差も個人差も万別であり、ステレオタイプ的に論じることはできません。
あくまでも一側面からの見方に過ぎませんが、私は、こうした現象には何らかの意味があるのではないかと思っています。

そう考える理由は、私がこれまで出会ってきた多くのAO・推薦入試の出願者の傾向として、受験後に自らで起業したり各分野での革新的なプロジェクトに参画したりする傾向が非常に強いことにあります。

しかも、合格者も不合格者もそれぞれの受験結果に関係なく、大学受験で出会った仲間と共に新しい事業に生き生きと取り組んでいることがほとんどです。

shutterstock_1176487726最小

合格者と不合格者に共通する、この屈託の無さと瑞々しさは一体どこから生まれるのでしょうか?

受験結果については、通常は「合格すれば喜び、不合格だと悲しむ」という価値観が一般的です。
努力しても合格という結果に至らなかった不合格者は、その結果について、“今後の人生の糧となる貴重な経験”として認識することで一旦の納得に至ることが多いと思います。

私自身、AO・推薦入試の指導に携わるようになる前までは、かなり長い間、受験生たちが合否結果を前にした時に感じる「喜怒哀楽」のような感情的な反応をどう自己納得にもっていくかといった価値観が当たり前だと思っていましたし、それはそれで真っ当なことだと思います。

shutterstock_568622650最小

ところが、AO・推薦入試というこれまでとは異なるルールの受験方式を経た受験生たちの関係性をみると、合格者にも不合格者にも共通して芽生える「全く別の価値観」があるようなのです。

それを一言で表すなら、「希望」です。

とても抽象的な概念的なキーワードですし、個人的な状況に依拠する感覚だと思われるのではないでしょうか。

ですが、実は東京大学社会科学研究所の玄田有史教授が率いる研究グループでは、「希望学」と名付けた学問研究を2005年から進めています。
非常に個人的な状況の中に存在する「希望」という概念を、社会科学的に再定義し、学際的な視点から分析する研究なのですが、私は、ここに一つのヒントがあると感じます。

玄田有史教授は、「希望」の特性について「幸福」や「安心」という概念とは異なるものとみなしています。

具体的には、
「幸福は持続することが求められるのに対し、希望は変革のために求められる。安心には結果が必要とされるが、希望には模索のプロセスこそが必要である。」
だと述べています。

さらに、人間の中に「希望」が生み出されていくためには、
「具体的な何かを行動によって実現しようとする願望」
という要素が欠かせないそうです。

shutterstock_1290174526最小

まさに「希望」を生み出すプロセス自体が、AO・推薦入試というシステムになっていることが、受験を通して出会いが、その結果の如何を問わずに「勝ち負けの競争相手」ではなく、その後「互いの志に向けて戦った同志」に進化する要因なのではないでしょうか?

次は「AO・推薦入試における本当の“表現力”とは?」です。
お楽しみに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?