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AO・推薦入試“合格者”と“不合格者”のそれぞれの行く末 :前編【逆転する男女格差】

こんにちは。日本アクティブラーニング協会理事の青木唯有(あおき ゆう)です。AO・推薦入試オンラインサロンのナビゲーターも務めています。

これまで長くAO・推薦指導に携わってきた私自身の経験から、AO・推薦に象徴される大学受験の大きな変化から見えてくる様々なことを、本ブログにてほぼ毎日お伝えしています。
このような情報や視点を、特に保護者の方に認識いただくことで、大学受験を通じて形成される親と子の自立した関係「親子軸」を育むヒントにしていただければ幸いです。

今まで人類は、「格差」の問題に絶えず悩まされてきました。

所得格差
地域格差
ジェンダー格差
学歴格差

あらゆる局面で問題視され、そして抜本的な改善が難しいとされる課題「格差」です。

今年、スイスで開かれる世界経済フォーラム、通称「ダボス会議」開催を前に、ある国際的なNGO団体から世界の所得格差における衝撃的な報告がなされました。

“世界の富豪上位2153人が2019年に独占した資産は、最貧困層46億人が持つ資産を上回っている”

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凄まじい状況ですが、この報告書では、こうした格差の背景として「ジェンダーの不平等」が指摘されています。
無報酬であったり正当な評価をされなかったりするような女性による労働の総時間が、世界で125億時間にのぼるとのこと。

こうしたジェンダー格差について、日本の現状を見ると、世界経済フォーラムによる世界各国の「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2020」によると、日本は対象153カ国中121位となっています。
同様の報告書で、これまで日本は、2015年が101位、2016年が111位、2017年114位と落とし続け、2018年には110位と多少挽回したものの、今回大きく転落し、史上最低となってしまいました。

こうした数字を見ると、この先の日本の未来は大丈夫なのか?とかなり心配になります。

ここで少し視点を転じて、AO・推薦入試の合格者と不合格者の男女比を見てみましょう。

例えば、慶應義塾大学法学部FIT入試(AO入試)における2020年試験結果データを見ると、

出願者 男子338名 女子571名
に対して、
合格者 男子64名 女子149名
となっています。

男女別の倍率を見ると、男子5.2倍に対して、女子3.8倍となり、明らかに女子に対する門戸が広いように感じます。

また、早稲田大学創造理工学部建築学科AO入試の2020年試験結果データは、

志願者 男子32名 女子54名
に対して、
最終合格者 男子1名 女子19名
という結果です。

女子の倍率が2.8倍に対して、男子になるとなんと32倍・・・合格者たった1名。

合否の結果だけを見ると、AO・推薦入試には男女の大きな格差があるように感じますよね。

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しかも、女子が圧倒的に有利。世界的な課題となっている「男性有利・女性不利」とは逆の結果になっています。

実は、女子学生の方が合格率が高いというAO・推薦入試のこうした傾向についてては、どの大学の採用担当者も、「大学が求める人財と照らし合わせた結果である」とし、合否の判断材料として「男女の区別は全く考慮していない」と言います。

一方で、東京大学が推薦入試を始めた翌年、実施初年度の結果を踏まえた推薦入試説明会に参加した際、副学長の方が、

「推薦入試を実施して、明らかな手応えがある。その一つに、優秀な女子学生を獲得できたことがある。」

その前提として、

「今までの一般選抜でも、東京大学には優秀な学生が多く集まることは確かである。ただ、合格者の多くが首都圏の中高一貫男子校の中で、同質の仲間とだけ過ごしてきたことに起因する学内環境のデメリットも、多々あった。」

とおっしゃっていたのが印象的でした。

私自身、そもそもAO・推薦入試の受験者自体も女子の割合が高いということは感じていたことですが、合格者の比率からみても、合格者に男女差があるということは、一体何を意味しているのでしょうか?

私は、AO・推薦入試の合格者と不合格者の「その後」を考察した時に、その本質が見えてくるのではないか・・・と考えています。

(中編につづく)

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