良い製品を生む、5つのステップ
「試作しよう!雑でも良いから、素早くたくさん試作しよう!」
ってアオキさんはすぐ言うけど、ずっと雑な試作をしてても、いつか製品になるというイメージができない。
何個も試作をするとして、どうなったら次のステップに行けるのか、どこまで行ったらゴールなのかとか、その辺りを教えて欲しい。
岐阜県の各務原市で連続開催中の『つくる つたえる ワークショップ』の内容について、ファシリテーターを務めるオゼキカナコさんと話しいていて、こんな話が出ました。
僕はその場で即興で、その質問に答えたんですけど、自分でもびっくりするくらい「そういうことだったのか!」って思えたので、ここに書いてみたいと思います。
①"大きさ"の確認
試作の1段階目はすごくシンプル。大きさを確認するために作ります。
手の上に乗せてみたり、机の上や床に置いてみたり、現実世界に置きながら、サイズ感を確認してイメージを膨らませ、これだなと思う大きさが見つかるまで何個も作ります。
②"機能"の確認
試作の2段階目は、機能を確認するために作ります。
フタを開け締めする、曲がる、座れる、収納できる、光る、音が鳴る、など想定通りに機能するかを確認できるまで、何個も作ります。
③"体験"の確認
試作の3段階目は、体験を確認するために作ります。
持ち運んで広げて物を置く、などなど、機能を含んだ「一連の流れ」として体験しながら確認します。ここで、機能としては良いけど体験としては邪魔だなあとか、全体のバランスを見て機能そのものを見直すこともあります。
④"景色"の確認
試作の4段階目は、景色を確認するために作ります。
想定する場所に置いてみて違和感のあるものになっていないか。使う人に似合うものなのか。誰がどんな様子で使っているか、人と人がどんな距離でいるのか、それは楽しいのか誇らしいのか。
体験よりも一歩引いた目線で、使う時の景色、使わない時の景色が良いものになるように確認します。その結果、全体のバランスを見て、機能や体験を見直すこともあります。
⑤"再現性"の確認
この段階は、とくに量産を前提とした製品開発に限った話になるかもしれませんが、試作の5段階目では再現可能かどうかを確認するために作ります。
ざっくり言えば、イメージしたコストで量産できるかどうかを具体的に検討します。素材、構造、組み立て方法、運送方法などを検討し、多くの人が使った時にも「機能」「体験」「景色」がしっかり再現されるかどうかを検討します。
とくに、作り手がお客さんの隣で解説しなくても、想定通りの景色や体験が簡単にお客さんの手で再現できるように、取扱説明書やパッケージやムービーを工夫する必要も出てくるかもしれません。
作業内容ではなく途中成果物の確認に着目
これまで、製品開発というと「図面を描く」「CGのイメージを作る」「3Dプリンターで出力する」などの作業にフォーカスした話がよく出ていた気がします。
でも上記の試作の5段階は、作業ではなく、各工程での成果物とその確認事項を言えた気がしていて。
作業についてはAIの進化とかいろいろあって、やらなくて良い作業も出てくると思うんですよね。でも、画面ではなくリアル世界に置いて使って、確認すべき5段階というのは、これから先も変わらずある気がするんです。
ステップがあれば気楽に始めやすい
それぞれの段階において「何個くらい試作すれば次のステップに進めるのか」は決まってません。また、必ずしも①~⑤の順番通りに進むわけではなく、重なったり、戻ったり、いろんなルートがあると思います。
1つ断言できるのは「いきなりすごいものを作ろうと思わない」「下手くそな試作だなと勝手に凹まない」ということ。
目の前の試作から、何を感じ取ったら良いのか。次に何を修正すれば良いのか。その辺りの参考として、試作確認の5段階を使ってみてもらえると嬉しいです。
デザインなんて言葉は使わない
個人的に一番「言葉にできてスッキリしたな〜」と思ったのは、
景色の確認
再現性の確認
というところでした。
とくに景色の確認は、僕が思う「デザインが果たす役割」を「デザイン」という言葉を使うことなく言えた気がしてます。
その製品を使う時に、使わないときに、人は景色はどうなっているか(どうなっているべきか)。そのあたりをしっかり考えてれば、闇雲にシンプルにするだけだったり、目立つかどうかだけを考えるなんてことも減るんじゃないでしょうか。
というわけで、今回は、今朝思いついた言葉を、取り立て新鮮そのまま書いてみました。これから、より深くこれらについて考えていきたいと思います。
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