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溢れる

どうしても、口を開けば開くほどに伝わらない何かが溢れてきてしまう。
きっとそれは何かを伝えようとするには逆効果で、沈黙が何かを伝えることがあることも知っていて、口をきつく結んでしまえばいいものを、それでも果てしもなく生まれては流れ出てしまう言葉。
喋り倒すことと、口ごもることしかしらない子供のように、目の前の人の目には映らない自分の姿はあまりに惨め。

言葉を信じない人、それに対して私が信じる言葉は空虚で無力。沈黙という名の言葉ですら、その人に届く前に空気の中でほどけて消えてしまう。
それでも頭の中では言葉が言葉を産んで、頭の中を駆け回って、相手を追い詰めて私を追い詰める。

一度でいいから、言葉のない世界へ足を踏み入れてみたい。頭の中にすら、言葉がない世界に。

外の風はうるさい。少しだけ雪が降って、誰かに伝えたくなって馬鹿らしくなる。灰皿はいつの間にか剣山になっていて視線を痛めつけている。ほんの少し、冬を恨んでしまった。

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