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歩くこと

よく歩きます。とてもよく。一人でいる時、予定もなく、ほとんど時間の縛りもない時、どこまで歩こうかということも決めずにただあてどない歩行を続けてしまうのです。誰かが一緒にいてくれれば馬鹿なことはよせと止めてくれるけれど、精神と疲労との中だけでやり取りしている時には、とめどなく歩いてしまうのです。

歩くということは、ただ足を動かすだけでなく、なんと身体が移動を続けているわけです。身体が移動するというのはつまりその中に詰まっている思考や知識、経験や記憶、倫理や感情などの全てが移動しているというわけであり、それはなんとも妙な感覚がします。というのも、それらの曖昧な概念らは身体の中に確認できたことは一度として無いわけで、かといってこの私の身体の外に確認したこともないわけであり、私がいない場所にそれらが存在しないということは絶対であるわけで、やはり移動するということはそれらを全て、誰にも見えないように引き連れているということなのでしょう。私が歩いている時、歩くだけの存在であれば果たしてどれだけ簡単なことでしょうか。

歩けるうちに、歩いておかなければ。
それが歩行の意味を忘れてしまう前に。

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