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海、手紙、足湯

背景 拝啓

気づけば夏です。
最近は「地球"沸騰化"」なんて言われていますが、本当にそうで、電気代にビクビクしている日々です。

調子はどうですか。

新しい会社には慣れましたか。
こちらは相変わらずです。

最近は早く起きて、30分くらい走っています。

あなたも来たことがあるので今更、ですが、僕が住んでいるのは典型的な港町で、坂ばかりです。アパートを左に出て、坂を登って、国道まで駆け上がります。国道沿いに走っていると左手に海が見えます。

太陽が徐々に顔をだすその時間がとても好きです。
国道から1本右手に入ると展望台があります。プチ観光地なんです。
そこで朝日をぐーーっと浴びて、アパートまでペースを上げて走ります。

誰もいない家に「ただいま」と言うのはあなたと住んでいた時の癖がまだ抜けていないようです。

汗ばんだシャツを洗濯カゴに放り込んで、シャワーを浴びます。
44度のシャワー。ちょっと熱いけど、これから仕事をするのでこれくらいがいいんです。

午前中には仕事の9割が終わります。
(仕事が全然ないのです。ついでにお金も。ください

午後は適当に過ごしています。
本を読んだり、小説を書いたり、スーパーに行ってビールを買ったりします。

そうそう、最近、足湯によく通っています。
そう、あそこです。前、よく一緒に行ったところです。

さすが温泉街というか、無料であの足湯は勿体無いですよね。
僕は昼過ぎに本を読みながら足湯に浸かるのが好きなんです。観光シーズンはゆったりできませんが、なんでもない平日は誰もいないんです。みんな働いている時間だし、そもそも地元の人はあんまり来ないのです。

全然、働いていません。あなたは羨ましいと言ったけれど、僕からしたらあなたも羨ましいです。隣の芝生はなんとやら、です。僕は仕事がない分、時間があるんです。中古で大人買いした漫画を読んだり、足湯でぼーっとしたり、昼からビールを飲んで昼寝したり、散歩したり、まさに隠居です。

思えば、「隠居じゃん」と最初にいったのはあなたでしたね。

今はこの「隠居」が気に入っています。
でも、あなたが名付けた生き方や、抜けない「ただいま」やあなたとみたアパートからの海がいまだに僕の日常にあるというのは、なんというか、未練がましい、というか、情けない、いや、まあ、変な感じがしないでもないです。

そんなこんなで、わけで、今度、引っ越します。

広島の、尾道、というところです。
広島に一度住んでみたかったんです。今の仕事はどこでもできますし、クビになったらバイトでもすればいいかなって。

新しい住所は、気が向いたら、送ります。

じゃあ、また。


生活費になります。食費。育ち盛りゆえ。。