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洗脳(短編小説)

あの方が言うから、そうなのだ。残念ながら。君がいくら説得しようとも、残念としか言いようがない。君の中の正義というものがそれならば、君は僕の敵だ。たとえ僕の親友である君だとしても仕方がない。なんとも言えない。もちろん君の正義を否定したい訳ではないが、否定でもしないと僕達の正義がいっきに崩れる。そうなれば僕の精神すら崩れてしまうからだよ。

例えば僕の親が僕達の正義を壊そうとするのならば、僕はまず親であろうが、その精神と命と生きる意味とを壊すつもりだ。尤も、それは僕の私情による怒りによっての行動ではなく僕というものを紡ぐあの方から与えられた精神と命と生きる意味にそった行動だ。

ええ、君から見たら大分間違っていると思うかもしれない。それに僕には君のその意見をねじ曲げるまでの力も気力も倫理も価値観も、持ち合わせてないからその、僕が間違っているという意見というものは飲み込む。
けれども残念ながら、君と世の言う「正」を僕は信じない。それにその「正」を法律と道徳の名の元で僕を説得しようが、僕は信じている方を選ぶ。いや君のことも信じてはいる。けれども僕の場合はあの方には「信じる」というものをさらに超えた、絶対的信仰、言わば忠誠さえを誓っている。それに僕はもう君の事は、嫌いだ。
人というものは正しい悪いで行動してるのではなく、アイシュタインの言う十八歳までの偏見とその人の事を好きか、嫌いかで行動するのだよ。
だから君と君の周りをとりまく世に僕は唾を吐き、そうして後ろ指を刺されながらも、喉を潰されたとしても、僕はあの方に対して絶対的忠誠が消えぬ限り、僕は讃美歌をあの方に送る。
けれども僕の言うあの方ってのは決して神なんかじゃない。聖書にすら載ってない。君達の言う空虚で無垢で倹約で愚かな人だ。けれども僕にとっては神みたいな方だ。あと、君は僕を不幸せだと言ったね。君の幸せの基準はなんだい?僕は君とその基準とその基準を創った奴を殴りたい。

ではまた、留置所で会おう。そんな間抜けみたいな顔するな。

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