ハタチ。は、この日のために。

8:30起床。

携帯には沢山の通知。

いつもの朝、と、
年齢 20 と書くことになった朝。
十代というのを終えた。
「まだ十代なんですか!?」
この声はもう二度ときけない。
そんなことを考えてしまった朝は少し憂鬱だった。

幼い頃は、誕生日にもらえるプレゼント、
手紙、学校から帰宅したあとの
両親からお祝いされ、ケーキを食べることが楽しみだった。
母は毎年、私のその時期のブームに合わせてケーキを用意してくれていた。
あるときはキャラクター、
次は蟹の形(その頃、蟹の骨格がとても好きで、年末に食べた蟹の甲羅を洗って部屋に飾っていたほど。)
紫陽花の花のケーキだったこともある。
ロウソクを消す。
この行事は毎年ある、
特別だけど当たり前のように感じていたことを思い出す。


今日は撮影がある。
高校2年からの毎朝のルーティンである
ストレッチとトレーニングを終え、ご飯を食べる。魚を焼いた。鰤。ブリ。

バラ、薔薇が、恋人から届いた。
20本。
久しぶりに触った薔薇、
トゲは痛かった。

今日はよく玄関のチャイムが鳴る。
母からだ。
私の好きな紫色のエプロン。
あと、アクリル絵の具と
母の達筆で女性らしい字でかかれた葉書。
彼女は私の最高の親友。に、今はなっている。

撮影に向かう。
階段をのぼる。
♪大人の階段の〜ぼる〜
やっぱ意識してんじゃん自分、、。

その日の撮影は着物の撮影だった。
成人した日に着物って、
なんか、いいな。
やっぱ意識してるのか自分、、。

無事に終了した。


例の歌がはじまる。

まったく予想していなかった。

人参にささる 20 という形のロウソク。
消した。
!→ .

誰かに祝ってもらうって、やっぱり嬉しい。
自分で歓迎していなかった二十代、
みんなが歓迎してくれた二十代。
ありがとう。

花束とプレゼント、泣き疲れた顔を持って帰宅
ポストをあける。
父からの手紙。
もう出し切っていたはずの涙が
どこからともなく溢れてくる。
急いで部屋に入り、
手紙を読んだ。
ただ一枚の手紙。
久しぶりにみた父の字。
慣れてない言葉が並んでいる。
「手紙慣れなくて変な文でごめんなさい。」
「あと、手紙を書いたことは凄く恥ずかしいので内緒でお願いします。」

父らしい終わり方だった。

寡黙で、謙虚で、優しい父。
人生で初めてもらった父からの手紙。

この日のためにハタチというものがあったのか。
そう思うことすら出来た。

憂鬱になることは無意味だ。
だって、時は進むもの。
今 がパーティーだ。
て、アルケミストにも書いてあった。
その通りだと思う。
今、その温度、その感情、その味を
噛み締めよう。

朝焼いたブリと、薔薇の匂い、痛かったそのトゲと、親友となった母からの贈り物、
消したロウソクのけむり、
父からの手紙。

これが私のハタチのはじまりだった。

それから1週間

「まだハタチなんですか!?」

この 「まだ」 は
もう少し聞けるのかもしれない。

何かをするのに遅いことはない。
まだまだやるべきことが、ある。
今 を楽しみ、先 を見据え、
後 を思う。

乾杯。



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