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ショートショート

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1.ショートショートとは小説の中でも、特に短い文章量で、構成される作品のことです。 2.このマガジンは、葵拓真が書いたショートショートシリーズの総まとめ集である。 このマガジ…
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2021年5月の記事一覧

ギラギラ(ショートショート)

何時間寝たんだろうと思う暇もなく、夜だけ起きれる体になった。
ダン ダン ダン
懲りずになる母がドアを叩く音が、打楽器を下手な人が鳴らすとイラつくように、いらついた。
「美代、入るわよ」
中になんて、入れたくないと思った。だって昔から、全てを否定されてきたからだ。
クスクスクス クスクスクス
学校での出来事が、何故だかフラッシュバックしてきた。
いつも一緒にいる友達グループとの会話でのことだ。

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音読部は黙読部の天敵(ショートショート)

日高は読書高等学校に入学したことを後悔する事件が起きた。
クラブがまさかの、黙読部と音読部しかなく、どちらかに入ることを義務付けられているからだ。
「チヨッリース、新入生さん体験入部かなぁ」
黙読部のドアの前で、開けようか迷っていると声をかけられた。
日高は、「は、はい、ど読書…好きなので……」と、目を逸らしながら言ってしまった。
 なぜなら、人と会話するのが苦痛にしか感じない性分だからである。

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一人だけ早起きな男(ショートショート)

僕は、目を覚ましてしまった。
いつもは、もうちょっと遅い時間に目を覚ますので、驚いた。
寝床から起き上がり、大きな欠伸をして背伸びをする。
「グワァー」と雄叫びを発しながら、この背筋を伸ばす毎日の習慣に、特別朝早く起きた版をつくりたくなってくる。
早起き版の習慣を作ろうと思ったのだが、実行に起こす気は、まったくおこらなかった。
「はぁーテレビでもみるか」
ニュース番組でもみるかと思って、テレビをつ

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カウントダウン(ショートショート)

博一は、夜遅く帰ってくる母親を待ち伏せしていた。
ガチャとドアが開く音とともに、「ただいま」と母の声が聞こえてきたので、スマホを持って駆け降りた。
博一は、「おかえり、今日は聞いてほしい相談があるんだ」と言ってみた。
すると母は、「お留守番ご苦労様、おかあさん何でも相談に乗るから大丈夫」と言い座布団に座った。
博一は、学校で今流行っているYouTuberについて語り、とあるお子様YouTuberの

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感電(ショートショート)

ひどい大雨だ。いつ雷が落ちてきてもおかしくない物騒な空をしている。
こういう時は、気持ちを明るく切り替えたいものだ。
「この資料、記入漏れてるよ」
「ちゃんとしっかり仕事してください」
いつか聞いた仕事仲間からの、痛烈な言葉に、へこたれる毎日を送っていたところだ。
こういう時は、飲み屋でも行って、気分をリセットしたい。
居酒屋で、ビールを頼もうと思った。
「すみません、生中ひとつ」
そしたら、お酒

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TUNAGARU(ショートショート)

私は軽い気持ちで、有名な某マッチングアプリTUNAGARUをやってみることにした。
好みの異性と繋がれると評価が高いアプリだということで、期待値があったのだ。
アプリを起動すると、顔写真と性別、ユーザーネームを登録して、自己紹介ページを書いて登録完了である。
自己紹介ページのアピールポイントには、大手の企業に働いていると嘘を書いた。
そしたら、数分後に、きらりという女性から好意を寄せられていると通

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変化逃亡罪(ショートショート)

わがままを振りかざし、現状に苛立ち自分の環境を大きく変化させたくなる。
つまりわがままの権化であって、罪なんだ。
主人格から分岐した人格が、そういう思考に陥り、少し前のとある行動について、主人格である私に、意見を述べてきた。
「なんで、前の会社を辞めた。あれは、なぜだ。コロナ、上司言い訳だろ、閉塞感に耐えかねて、吹っ切れたんだ。つまり逃亡した。罪なんだよ」
主人格は、呆然として、分岐人格の話に耳を

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