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真夏のコロッケ

茹で上がったジャガイモをつぶして、炒めた玉ねぎと肉を入れる。全体をほっこり混ぜて丸めたら、小麦粉、卵、パン粉と付けていく。カリッと揚がったら完成。  

今日は、久しぶりにコロッケを作ろうと思い立った。久しぶりのコロッケ作り。娘たちがいた頃は、分担しながら、一緒に作った。何の変哲もない普通の基本のコロッケだけど、たわいもない話をしながらのひとときは、楽しかった。
ふと見上げると、夏の日差しに照らされた葉が、キラキラユラユラと風に揺れている。静かな午後。一人だと、やっぱり、ちょっと、寂しい。

長女三七歳、次女三六歳。
彼女たちが、進学のため一八歳で家を出ていった日を、思い出す。「じゃあ行くね」「気を付けてね」そう見送った。あふれる期待と希望が、少しの不安を打ち消すように、全身が、ピカピカと輝いていた。「大丈夫、なんとかなるよ」。娘たちに、そして自分自身に告げる。

心配だった。これからは、何もしてあげられない。一人で考え、乗り越えていかなければならない。大丈夫、きっとできる。十八年の間、一緒に、食べて寝て、泣いたり笑ったりして、暮らしてきたのだから。
この何でもない日々を、信じている。

今は、二人とも家庭を持ち、子育て、仕事にと、忙しい。

ジュージューと音を立てて、コロッケが揚がっていく。おいしそうに頬張る彼女たちの顔が、浮かぶ。会いに行こう、コロッケを持って。
喜んでくれるに違いない。

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