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派遣王女☆ウルスラ / 第17話(3,647文字)

■第17話■


龍王妃シータ姫


扉絵


1頁 龍妃の名はθ(シータ)




龍姫の間
カァ、カァ、
翼をつけた仔豚が宙をとんでいる

龍妃の椅子の上には巨大な垂れ幕があり《龍太后之満漢全席》と叢書でかかれてある

まるで宝の地図の黄金島のような丸テーブルの上に、それぞれ高さが大小ちがう銀器や青磁や漆塗りの椀や六角形の盆状の器やツボが置かれ、その間には龍や獅子や白虎や竹林やロボット兵の決闘シーンなどを模した氷の彫刻が飾られている。所々に置かれたドライアイスからはモクモクと白い煙が焚かれ、神秘的な雰囲気が醸しだされ、さまざまな鮮やかな色を用いた濃密な彩りに塗られた鳳凰の形をした飴細工、熊の手のひらと鹿のアキレス腱を柔らかく煮込んだスープ、チョウザメの軟骨とフカヒレが入ったジュレ、アワビやナマコや魚の浮袋などをつぼ煮込み、イカの卵巣のから揚げ、アナツバメの巣のお吸い物、アワビの刺身と酒蒸し、アザラシのロースト、ハンザキのキャビア、白キクラゲとウズラの卵のスープ、キジバトのフォアグラパイ包み、そら豆とホタテでできた翡翠豆腐、セロリとヤマブシダケの蛯子酢和え、白菜とワスレグサの芥子漬け、帆立とラクダのコブと青梗菜の長寿揚げ、伊勢エビと高麗人参の甘酢炒め、オマールエビと猿脳の甘酢炒め、魚唇とサイの陰茎と象の鼻のコラーゲンスープ以下…300品の料理がならぶ。みなの前にはジャスミン茶が置かれている

龍姫は口についた真っ赤なスープを布巾で拭い

「申し遅れました。私はこの国の領主」
「龍妃θ(シータ)と申します」

ウルスラは真っ青なスープを腕で拭い、ガニ股で構え
「申し遅れました。ささ、おひけえなすって」
「あたしゃ姓はウルスラ名はイクリプス」
「ヒト呼んで『派遣☆王女』と…」

もうええわいッ!!

カフカとアリスとドワーノフはツッコむ




2頁 プロデューサーズ・カット




シータ姫は言葉をつぐ
「太古より地上の島々は平和でした」
「ですが、島々は互いに激しくぶつかるようになりました」

ドワーノフは
「それでこの星はどうなったのですか?」
カフカは慌ててドワーノフの耳元にささやく
「ちょっと、話の展開がはやくないか?」

シータ姫はドワーノフに向かってしゃべる
「地上にある我が龍王城はほかの島々が連合して組織された武装集団によって破壊されました。この惑星に降り立ったエイリアンに唆されたのです」

シータ姫はそういってカフカの服の肩章をじっと見つめる

カフカは自分の服を見ておどろき

えッ、えーッ!!

自分の顔を指さす
みんなは顔を見合わせる

ドワーノフはじっと考え込む

カフカはドワーノフにきづき
「どうしたんだ? ドワーノフ」

ドワーノフは答える
「……計算が合いません」

アリスは
「なんの計算が合わないの?」

カフカは頭を傾げる
「十年前まえに出航した宇宙探査船ディスカバリー」
「通称《13号》は音信不通になった」
「探索中の不慮かどうかは原因不明だった」
アリスは話を受けて
「たった数日でこの星に来られる距離なのに…」
ドワーノフはシータ姫に訊ねる
「シータ姫殿、この星について」
「つかぬことお伺いしますが…」
シータ姫はドワーノフのセリフを無視して捲したてる
「《13号》と書かれた船から降りてきた奴らが勝手に名づけた《ペリドット星探索隊》と呼ばれる過激部隊に煽動された島々の連合軍いわゆる《ペリドット星解放革命軍》によって、この星の創造神を祀る宮殿がある我が竜王城が破壊されてしまったのです!!」

ズコーッ!!

「いきなり、そんな話の核心をいわれて、わかるかーいッ!!」

カフカとアリスはツッコむ

シータ姫はカフカとアリスのツッコミを無視し
「私たち龍王族は勇者ビュシュヌ・アウレリャノ・ラーマの血を引く種族だからです!!」

ズコーッ!!

カフカとアリスとドワーノフは
「ここでもまた、勇者にも魔王にも値する曰くのアウレリャノの名が…」

シータ姫は
「地上の龍王城は、私の先代の始龍帝バーブル女帝が猛将ロンゾ将軍に建てさせたこの星を創始した十七の神アウレリャノを祀る寺院なのです!!」

カフカは脂汗をかきながらさけぶ
「ななんでなんだッ!! こんなにもチグハグな発言なのに」
「この星の状況の全体像がたった数コマでわかってしまった」

アリスはボソッと
「大人の都合で勝手に編集されちゃったような展開…」

カフカは慌ててアリスの口を塞ぐ
「それ以上は言うな。見られているかもしれないぞッ!!」
カフカとアリスとドワーノフは宮殿内をキョロキョロと見まわす

ウルスラは読者(あるいは編集者)をじっと見つめる



3頁 見〜た〜な〜



ウルスラの読者目線の顔のズームアップ

ズコーッ!!



4頁 最終戦争「終末の煙」



カフカは
「話を整理すると…」
「十年前にぼくらの星を出発した探索船《13号》は…」
「この星に不時着し、なぜか島々を扇動してまわって」
「この星を統治するシータ姫の先代の龍王城を襲った」

ドワーノフはカフカの話を継いで
「《13号》から降りたメンバーによって組織されたレジスタンス軍は各地で武装蜂起し、同時多発テロを起こし、龍妃軍は地上を追われ、海底に牙城を建設することになった」

シータ姫は天を仰ぐように両手を組み
「龍王城が破壊された地上は無秩序に荒廃し」
「連合反乱軍は互いに仲違いを始めました」
「このような島の分裂が起こったとき、古の言い伝えによると……」

そう言ってシータ姫は《龍太后之満漢全席》書かれた巨大な垂れ幕に描かれた挿絵のような絵をみる



5頁 古代兵器




垂れ幕には影絵のような絵が描かれている

それは噴火した火山に立ち、炎を吐くドラゴンのような絵だ
ドラゴンに無数に分かれた軍隊が戦いを挑んでいるが、みな口から吐かれた炎に焼き払われている。文字が書かれている

《පුරාණ තහනම් ආයුධය "ගිනි-ආශ්වාස කරන වයිපර්" බිම දිස්වේ》

ウルスラは
「…読めない」
ドワーノフは
「古代の禁断の兵器《火を吐く毒蛇》が現れて地上にあらわる」

シータ姫は
「古代兵器が現れれば、あらゆる島や命が一瞬にして消えさってしまいます」

その時だった

カタッカタカタカタッカタカタカタッ

ウルスラが肌身離さず持ち歩いていた四次元ポシェットがカタカタと音を立てて鳴り始めた




6頁 暴れる箱(四次元ボックス)




ウルスラは
「ガルド婆がくれたお助け袋だ!!」

カフカとアリスは
「いままでずっと持ち歩いてたんかいッ!!」

ウルスラはポシェットから宝石箱のような箱を取りだす
箱は壊れんばかりにテーブルの上で暴れる
箱の中から聞き覚えのある声が聞こえる

「ほれ、はよ開けんかいッ!!」

ウルスラは笑顔でさけぶ

「この声はガルド婆だ!!」

カフカとアリスとドワーノフの三人は首を傾げる
「ガルド婆?」
アリスはハッと
「あの絵ハガキに一緒に映ってたお婆さまかしら?」
カフカは胸ポケットから絵ハガキを取り出してみて
指をさす
「この婆がガルド婆かな…」
ウルスラとルーシーたちが雪合戦をしていて手前ではガルド婆が雪の上で宙空ですっ転んでいる

「ルーシーッ!! 開けい!!」
「そこに鍵開けルーシーがおるじゃろうにッ!!」

ウルスラは暴れる箱に向かって
「ルーシーはじゃんけんで基地にいるよ」
暴れる箱は
「鍵はどこじゃ?」
ウルスラは、ちょっと待ってと言ってポシェットに手を突っこんで弄る

ジャラ…

ウルスラは無数の鍵がついた輪っかのホルダーを取りだす
「これ?」
暴れる箱は
「見えんわいッ!!」

シータ姫とドワーノフは
「これは新たな漫才かなにかでしょうかね?」
カフカとアリスは
「違うと思います。来年のギャグランプリには決勝にでると意気込んでいましたが」




7頁 箱、ひらく



8時間後…
ウルスラは最後の鍵を差しこむ

カチャリッ

ボワンッ!!

みんな

「ようやくでた……」

カフカは汗をかいてみんなに
絵ハガキを見せる



8頁 ガルド婆の再登場



ガルド婆は
絵ハガキとまったくおなじアングルで宙空ですっ転んでいる絵




9頁 基地チームは…




ウルスラはさけんでガルド婆を抱きしめる

ガルド婆!!

カフカとアリスとドワーノフはガルド婆にガルド婆に深々とおじぎをして名刺交換をする

ガルド婆
「んで、肝心の鍵開けルーシーはどこにおるんじゃ?」

ドワーノフはかくかく然々と事情を説明し
「いまは基地におられて私たちの帰りを待っております」

ドワーノフはそう言って
両目からサーチライトのような光線を横断幕に発して基地の映像を映しだす




10頁 おひけえなすって…




地上の基地

全身が腐って溶けて骨だけになったドラゴンゾンビは
「私の姓は(聖闘士)セイント、名は(清)キヨシ…」
「アッシの名前はヒト呼んで…」
「フーテンのキヨさんと申します」

ボッチとルーシーもおなじガニ股で後ろに短刀を構え
「ささ、おひけえなすって…代表して私(わたくし)姓はダイダラ…」
「名はセグンド…ヒト呼んで『ダイダラボッチ』と申します」

ドラゴンゾンビは
「ささ、おひけえなすって…」
ボッチは
「手前、旅中のモノでござんす。ぜひともお兄(あに)いさんからおひけえくだすって…」

ズコーッ!!



第18話へつづく


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